23:JK[saga]
2011/12/17(土) 18:35:53.80 ID:JjKvBwFx0
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空には相も変わらず月が浮かび、星が地を照らしていた。
星は小さく照る。
月は猟奇的な茜色。
茜色に輝く、猟奇的な月だ。
草加暁。
彼は何時からか、夜空の下を歩く行為を日常としていた。
「好き」でも、「愛している」でも、「貴方と一緒にいたい」でも、
彼に斯様な想いを与えてくれる者が世界に存在しないと確信して以来、
彼は夜空の下、月光を浴びて生きていく事を選択していた。
単なる若い感傷だと思って貰えれば相違ない。
暁は少年の時分、己の存在が人よりも劣っている事に気付いた。
自分には何もない。
生まれ付いての才能など微塵も身につけてはいない。
故に自分を愛してくれる者が存在などするはずもない。
ただ存在しているのみで、生きていようが死んでいようが誰にも関係がない。
斯様な存在だと、自分の身の程を自覚していた。
故に暁は夜を往く。
夜は暁を包み込んでくれる。
何もない暁を消失させてくれる。
故に暁は夜を歩く。
陽の当たる場所よりも、月光の下を選択したのだ。
その行為は誤りではない。
決して誤りではない。
彼が誤ってしまったのは……。
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