過去ログ - 夜叉「もうすぐ死ぬ人」
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24:JK[saga]
2011/12/17(土) 18:36:24.00 ID:JjKvBwFx0





暁が己と同じく夜を往く者と邂逅したのは七年前。
自分の力で成長したと断言して憚らない反抗の時分。
彼は夜の者と邂逅した。

月夜叉。
月の下を往く夜叉と彼女は名乗った。
その時分、暁は旅という名の反抗を実行していて、偶さか彼女と巡り合った。
彼女と出逢えた理由を、暁は深くは考えなかった。
天女のような夜叉。
美しき魑魅魍魎。
跳梁跋扈する非人間だ。

暁は未だ十三の少年ではあったが、
自らが取るに足らない存在でしかない事を理解しており、
寧ろ人より幾分にも劣った存在である事すらも自覚していた。
故に、故にこそ、
偶さか出逢えた月夜叉という非人間を離したくはなかったのだ。
二度とは来ない街だと思うことで、気が大きくなっていたのもあったかもしれない。

「月夜叉」

未だ声変わりもしていない澄んだ声で、
しばしば暁は彼女にそう問い掛けていたものだ。

『どうした、暁』

人喰いの鬼だというのに、月夜叉は常時穏やかに応じてくれていた。
彼女は月の下でしか姿を現さなかった。
月光の黄昏時。
月夜叉と暁は邂逅していたのだ。

月光が。

少年と夜叉を包んでいた。
少年は何処までも少年でしかなく、夜叉は何処までも夜叉だった。
己の身の程を恐らくは互いに自覚していた。


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