28:JK[saga]
2011/12/17(土) 18:41:29.57 ID:JjKvBwFx0
『私は人の子ではないよ、暁』
「ああ、分かっているよ。
それでも俺は月夜叉が……」
『否、暁。
私は人の子ではなく、生命体でもない。
人の子に似た姿をしているだけだ』
「月夜叉。だから俺は……」
『私は決して人の子ではない。
分かるだろう、暁。私は人の子ではないのだ
過去にあったように、性交には応じよう。
暁との性交、悪くは無い。人の子の営みを真似る事、楽しくもある。
だがな、暁。私を私として必要とされる事には応じられない。
私は暁の傍に何時までもは居られない。私は人の子では無いからな。
人の子が非人間を必要とする事は悪しき事ではない。
非人間に期待を掛ける事も問題では無い。
されど、非人間からの代償だけは、求めてはならない』
「月夜叉が人間じゃないからって、俺は気に……」
不意に、暁は口篭もる。
言っていて、気が付いた。
月夜叉は人間ではない。断じて人間ではない。
当然、人間でない事を暁は気にしない。
故に、気付いた。
人間でないものに惹かれる事。
それは人間を拒絶する事だ。
人間を拒絶する行為自体は、
人間が人間として生まれてきた以上、近親憎悪の発展として存在するのは社会構造の基本だ。
社会が存在する以上、人間を拒絶するという感情は間違いなく存在している。
人間は己が存在し続けるために、関わりたくもない他者をも利用せねばならない。
その打算関係の発展こそが社会だ。それ自体に問題は無い。
されど。
人間を拒絶しながらも、人間に似たものに惹かれるのはどういう行為なのか。
例えば、人間嫌いを公言しながらも、劇作や劇画に執着する者が在る。
それは支離滅裂だ。
つまるところ、人間を否定し、
非人間に期待する行為は、単なる劇作嗜好の倒錯に過ぎないのだ。
暁の行為は恋や愛ではない。
劇作に倒錯するようなものだ。
されど、倒錯自体にも問題は無い。
問題なのは、その倒錯を社会そのものに当て嵌めようとする行為そのものだった。
「月夜叉、俺は……」
項垂れて、搾り出した暁の声は掠れていた。
月夜叉は分かっている。
感情が存在せず、死のない物だから理解しているのだ。
暁の求めているものを。暁が真に欲しかったものを。
故に気紛れで暁の要求に応えてもくれたのだろう。
暁は愛してくれるものを求めていた。
誰かに愛して貰いたかった。
その欲求は何時しか単なる願望へと変化し、何者かを愛する事を忘れさせた。
否、もしかすると、
最初から見返りの無い好意を誰かに注ぐ気になれなかっただけなのか。
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