過去ログ - 夜叉「もうすぐ死ぬ人」
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29:JK[saga]
2011/12/17(土) 18:42:01.11 ID:JjKvBwFx0
暁が真に求めていたものは、愛してくれる者や、愛せる者ではない。
他の誰でも良くて、誰でもない女こそが欲しかったのだ。
無表情でただ自分の想いを受け止めてくれる、都合のいいそれだけの女が。
恋人に本気になれない理由も、恐らくはそれだった。
斯様に都合のいい人間など存在しているはずもない。

一度、月夜叉で味を占めてしまった暁は、それをそうと認識が出来ていなかった。
斯様に都合のいい存在は、
劇作の中の登場人物か月夜叉のような非人間だけだという事を。
もう己には誰かに愛される事も、
誰かを愛する事も永久に出来なくってしまったのだという事を。
全てを見抜いている表情で、月夜叉が穏やかに言った。

『それでも私を求めるか、暁』

最終選択だった。
暁は月夜叉を見つめ、ただ自分の愚かさを呪った。

月光が。

茜色の月光が、暁の身体に降り注いでいる。
暁は生まれながらにして、才能や優れた外見を持っていないが故に不幸だった。
それ以上に才能と外見のみを全てとし、
諦めという救いに頼らざるを得なくなった瞬間から、彼は不幸ではなく哀れな存在と化した。
求めるものは自分に都合のいいだけの存在。
自分を求めてくれるものすらも信用出来ない。
彼は何時しか斯様な人間に変貌していた。
斯様な人間が生きているとは言えない。
暁は生きながらに亡者だったのだろう、既に。

それに気付いた暁は自らを棄て、月夜叉の贄となる事を選択していた。
茜色の月光を浴びつつ、
自分が死に至るまで残りどの程度の時間が必要なのだろうと、
何故か暁は斯様な無意味な思考を続けていた。
斯様にして茜色の中、暁は自らの身体を紅に染めた。
これは単にそれだけの少年の物語の顛末だ。


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