過去ログ - 夜叉「もうすぐ死ぬ人」
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7:JK[saga]
2011/12/14(水) 02:50:46.04 ID:7vHzEqmB0
 月光が。

その名の通り儚い雪に。
降り注いでいる。
死ぬ、と雪は。
もうすぐ死ぬ、と雪は言った。

月夜叉は何も言わない。
何を言う事も出来ない。
月夜叉に死は無い。
死が無いからこそ、久遠に等しい時を生きていられる。

死とは何なのか、月夜叉は知らない。
月夜叉は死を体験する事が出来ない。
死を恐怖する事すら出来ない。
彼女は、夜叉だ。
生物ではない。
ただ其処に存在するだけの、夜叉なのだ。
死を理解出来る事は恐らく永久に無い。

『死……か』

月夜叉はただ事実を淡々と呟く。
雪は死ぬ。
もうすぐ死ぬ。

故に月夜叉は、もう雪と逢瀬出来ない。
何度も体験してきた。
何万回と久遠の時の中で繰り返してきた別離だ。

人は、死ぬ。
月夜叉は、死なない。

それが事実であり、現実であり、真実なのだ。
単純な真実なのだ。

『死ぬのか、雪』

何故に死ぬのか、月夜叉は問わなかった。

「うん。残念だけどね。
まだ少ししか生きてないのに、もう死ぬんだって」

『そうか……』

「お月さん、あたしが居ないと寂しい?」

『多少な』

事実だった。
感情を持たない月夜叉だったが、寂寥程度は若干感じられる。
その程度は。

雪は少し笑みを浮かべ、続ける。

「ねえ、お月さんって死なないんだよね?」

『恐らくは。試した事はないが』

「……羨ましいな」

『羨ましいか。
そうか……、そうだな……』


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