過去ログ - 御坂妹「……代理演算……ですか?」
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2:たくみ[sage]
2011/12/20(火) 18:02:49.33 ID:DHkrYFdFo
秋が近い。
最近、御坂妹はその事を頻繁に感じるようになっていた。それをはっきりと感じ、きちんと意識したことはない。無意識と有意識の狭間で、ただぼんやりと。
明確な根拠はない。
日中の気温は未だに真夏日と呼ばれる気温だ。夜だってまだ寝苦しい。雷が夜空を貫き、大粒の雨がこの地を叩くことも今だにある。
熱に犯され、倒れてこの病院に運ばれて来る患者もいる。
それでも、と。
御坂妹は思う。ここには秋の吐息がある。秋がすぐそばに来ている。
耳を劈くばかりに鳴り響いていたセミが、何時の間にやら姿を消してしまったことに気づいたとき。熱気の中に存在する、確かな秋の冷気を肌で感じたとき。地面に落ちた葉を見たとき。
そして、かつては痛いと感じるほどの午後の斜陽が、柔らかいと感じるようになったとき。
御坂妹は季節の変化を感じた。
彼女にとっての初めて感じる季節の変化は、どこか切なくて、寂しくて。名残惜しくてしょうがなくて。
次の季節が、まだ味わったことない、知識でしかない「秋」が楽しみで、待ち遠しくて。
それは出会いと別れが交錯する春のようで。
まだ出会ったことのない季節に期待と不安を抱きながら。初めて味わう『心』の変化に胸踊らせながら。
少女はこの季節を過ごす。
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