過去ログ - 続・垣根「友達が欲しいんだが」
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3:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga]
2011/12/22(木) 02:22:59.98 ID:se/IE0uI0


暫く歩いていた少年が、やがて一つの扉の前で立ち止まる。

数ある他の扉に比べても、特に何の変わりも無いように見える扉。金属の取っ手は光を反射して鈍く輝いていた。右手が掴み、そして捻る。
古臭いビルの印象に違わず、叫ぶような軋む音をあげた扉。少年の姿がその空間を後で、閉じる時にも同様にあがる耳障りな音。彼は呆れたように蝶番を一瞥した。



室内を照らしている照明も廊下と似たり寄ったりの暗さだったが、目が慣れてさえいれば然程不自由も無い。

部屋の片隅に、正方形のような形をした旧型のテレビ、その上の面には古ぼけたゲーム機が無造作に置いてある。

そのすぐ横には段ボール箱が。開けっ放しの上面から、不思議な形をした円形の物体が半分ほど顔を覗かせている。
輪になったパイプから幾つものコードが内に向かって放射状に伸びているそれは、随分と分厚い埃の鎧を纏っていた。


部屋のもう片隅には、どこかの研究所から頂いてきた観葉植物。空気中の水分から勝手に水を取り込むというそれは、未だに青々と茂っている。



左右に動く彼の視線が部屋の中心近くに二つあるうちの片方のソファで止まるまで、間は置かれなかった。


「あら」


視線の先、いかにも今気付いたような声をあげた先客は、頼りない明かりの下で本を開いている様子だった。
そんな声を聞いて少年は苦笑する。久しぶりに会った台詞が、それか。

このビルは扉ごしにも足音が十分響く。忍び足でもしない限り、来客に気付かないはずが無い。
その事を身をもって承知している彼からすれば、少女の態度は大層下手な芝居だった。



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