過去ログ - マミ「杏子……」
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15:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga]
2011/12/23(金) 02:28:55.32 ID:c4Axoe8J0
 沈黙を破ったのはキュゥベえだった。杏子は振り返ることなく、ぴたりと足を止めた。

「君の力が必要だ」

「知ったことじゃねーっつーの」

 冷たい空間に杏子の声が響き渡る。

「あたしはね、もう他人のためには金輪際戦わないって決めたのさ。何度も言ってるだろう?」

「それは僕もわきまえているつもりだ」

「じゃあ何かい?それ相応の見返りって奴を用意できるってのかい」

 キュゥベえは俯いたままのマミをちらりと見てから言った。

「戦いで得られたグリーフシードは君が持っていっても構わない」

「ハッ」

 杏子は、お話にならないとばかりに両手を広げた。

「グリーフシードだって?そんなもの間に合ってるよ。あたしはマミと違って効率のいい稼ぎをしてるからね。こっちからお裾分けしてやりたいくらいさ」

 言い捨てると、杏子は再びその場を立ち去ろうとした。

「杏子……あなたは私が憎いの?」

 その時、マミが絞り出すような声で言った。

「私が……私の事が憎くて、あなたは……」

「馬鹿か、てめーは」

 杏子は舌打ちした。

「これはあたしの生き方の問題なんだよ。他人は関係ない。あんたも含めてね、マミ」

 杏子はマミに向き直ると、正面からその瞳を睨みつけながら言った。

「だいいち、あたしのことが許せないって言ったのはあんたの方だろう?だからあたしはおとなしく『縄張り』を譲ってやったんじゃないか。それを今さら助けてくれだなんて、虫がいいにも程があるってもんさ」

「……」

「辛気くさい顔してんじゃねーよ。分かってんでしょ?もうあの頃には戻れないってことくらい。正義の味方気取って、一緒に仲良く魔女をやっつけて、あんたの淹れた紅茶飲みながら二人で夢を語りあって……なんてやってたあの頃にはさ」

 それだけ言ってしまうと、今度こそ杏子は振り返ることもなくその場を後にした。

「杏子……」

 残されたマミは、杏子の消えた方向を見つめたまま、ただその場に立ち尽くすだけだった。



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