18:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga]
2011/12/23(金) 02:31:48.98 ID:c4Axoe8J0
「うわぁ。やっぱり外は気持ちいいね、マミ」
屋上のベンチに腰掛けたあきは、空を見上げながら気持ちよさそうに伸びをする。マミはその様子を見ながら、くすっ、と笑った。
「本当に変わらないのね、あき」
そういいながらマミは、ほっとするような、胸がちくりと痛むような、何とも言葉にし難い気持ちになった。
小学生のころはマミとあきの体格はほとんど同じくらいだったのに、今はマミの方が頭半分くらい高くなっている。
体つきも、マミはずいぶんと女らしくふくよかになっているのに、あきはとても華奢だった。
黒く透き通った瞳と、首筋から肩に流れる美しい髪の毛がなければ、痩せこけた男の子のように見えたかも知れない。
「マミはずいぶん変わったね」
「え?」
その一言にマミはどきりとする。
「すごく色っぽくなったよ。お姉さんって感じ」
「もう。からかってるの?」
「えへへ。ばれた?」
「あきったら……!」
マミは笑いながらあきを軽くこづいた。冗談だよー、と言ってあきも笑い始める。
空は鮮やかに晴れ渡っていた。
遙か頭上で、一羽の鳶が円を描きながら宙を舞っている。
校庭で遊びに興じる生徒たちの笑い声が、風に乗って微かに聞こえてきた。
「でも、ほんとにマミはきれいになったよ」
そう言いながらあきは、ブラウスの袖から伸びる白くて細い腕をマミに見せた。
「私なんて、こんなにやせっぽちだし。いつまでたっても何だか子供みたい」
「そんなこと気にしてるの」
マミは言った。
「だいじょうぶ。あきはもともと美人なんだし、それに……」
「それに?」
「ふと気づいたときには、変わってしまっているものよ、人って。たとえ望んでいなくたってね」
それを聞くとあきはしばらく神妙な顔をしていたが、やがてくすくすと笑いだした。
「?どうしたの?私、何かおかしなこと、言ったかな」
「ううん。ただ、何だか本当に、お姉さんみたいって思ったの。私よりもずっと先のほうを歩いてるって感じ……」
「そんなこと、言わないで。寂しくなるじゃない」
笑いながらマミは言った。そこで会話は途切れた。
屋上を渡る風の匂いは、マミにはとても懐かしく感じられた。
もうずいぶんと長いあいだ、マミにとって記憶とは、思い出すのも辛い悲劇が暗い影を落とす暗渠のような場所でしかなかった。
けれどもそのときマミの鼻先をくすぐっていった風は、確かに、かつてほんとうに幸せだったころの何かを象徴しているように思えた
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