過去ログ - マミ「杏子……」
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19:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga]
2011/12/23(金) 02:32:29.93 ID:c4Axoe8J0
「ねえ、マミも勉強してみない?イタリア語」

 そろそろ戻りましょうか、とマミが促そうとしたとき、あきが唐突に言った。

「え?」

「ね、そうしよ。きっと楽しいよ。それに、そしたら来年一緒に勉強できるかも知れないし」

 見滝原中学では、3年になると総合学習の一環として第二外国語のカリキュラムを履修することができる。

 しかし、もちろんマミはそんな先のことなど考えたこともなかった。

「別に、興味がないわけじゃないんだけれど……。私は、あきみたいにイタリア留学することなんてないだろうし」

「えへへ。ほんとは、私もきっとムリなんだ。夢は夢のままで終わりそう」

 あきは力なく笑いながら、言った。

「あんまりうまく行ってなくて。私の家」

「そう……なの?」

 あきは俯いたまま、ぽつりぽつりと語り始めた。

「お父さんがあまり家に帰ってこないようになって……。お母さんもそれでふさぎ込んじゃって、最近じゃ私が家事なんか全部してるの」

「そうだったの……」

「別にそれはいいんだよ?お母さんが辛いときは、私が支えてあげなくっちゃ、って思うし。でも、イタリアに行きたいなんて、とてもじゃないけど」

「でも、イタリア語の勉強をしてるってことは、あきらめてないってことでしょ?」

「そうだね。っていうか、それをやめちゃったら本当におしまいになっちゃいそうな気がして……。それが、怖いの」

 あきはベンチに両手をついて空を見上げた。マミもつられて空を見た。どこまでも青く、そして高い空が、そこには広がっていた。

 やがてあきは囁くように言った。

「マミ。夢ってほんとに、遠いんだね」



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