99:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga]
2011/12/23(金) 04:05:28.39 ID:c4Axoe8J0
そこはある晴れた日の、病院の屋上だった。
変わった点と言えば、過ぎ去った嵐の痕跡がところどころに残っていることと、そして―
「あなたに魅入られた生徒たちが、どうしてみんな屋上で死のうとしていたのか……私には分かる気がするわ」
巴マミは、黒く深い瞳で空を見上げている少女に話しかけた。
佐倉杏子が小声でキュゥべえに話しかける。
「おい、マミの奴大丈夫か……?まだ魔女は生きてるかも知れねえじゃねえか」
「いや、もう力は残っていないだろう。結界の外では……魔女は生きられない。ありったけの魔力で展開した強力な結界を破られた今、あの魔女はただ消えていくのみさ」
キュゥべえは言った。
「抜け殻だけを後に残して、ね」
「……」
杏子はマミを見た。
その表情には、この上ない悲しみと慈しみが同居しているかのようだった。
「それはあなたが……空を見たいと願ったからでしょう?魔女に魂を乗っ取られる、その最後の瞬間まで、いつか見た美しい青空の面影を追い続けたからなのでしょう?あなたの強すぎる願いは、歪んだかたちで―」
マミが言い終えるより前に、少女は静かに膝から崩れ落ちた。
その身体を、マミはそっと抱き留める。
「ねえ、見てよ、あき……」
マミの肩は震えていたが、その表情は隠れてしまって杏子には見えなかった。
「今日も、こんなに空がきれいよ。あなたが憧れていたイタリアの空に、少しでも似ているかしら……」
あきの身体を抱きしめまま、マミもまたゆっくりと崩れ落ちる。
杏子はその背中をただ黙って見守っていた。
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