130:>>1 ◆weh0ormOQI[saga]
2011/12/29(木) 23:06:28.94 ID:Tke7n+/c0
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つん、と瞼の裏に隠れた眼球を光が刺激した。
それが目覚めの合図だった。
呻きに似たさえずりが喉から漏れる。
音を拾った鼓膜が震えて、羽毛のような布地が肌に触れる感覚を同時に覚醒させた。
眩しい闇が緞帳を開くように、徐々に徐々に持ち上がっていく。
「僕が、わかるかい?」
『僕が、わかるかい?』
ふと十二年前の、この世に生を受けた瞬間のことを思い出した。
遮る幕を取り払った眼球が最初に捉えたのは、赤髪の魔術師の姿だった。
窓辺から差す、払暁を背にした表情はよく見えない。
それは後光のせいか、あるいは双眸をいっぱいに埋め尽くす水分のせいなのか。
『泣かないで。あなたがなんで泣いてるのか、わたしにはわからないけれど』
そういえば十二年前、瞳を涙で潤ませていたのは彼の方だった気がする。
とにもかくにも、その顔を一瞬でも早く脳に刻み込みたくて、ベッドから――
インデックスはいつの間にやらベッドに横たえられていた――跳ね起きた。
「う、ん。わかる、わかるよ。私の、世界で、一番の人」
勢いそのままに抱きついた。
その表情を間近で眺めたかったはずなのに、気が付けば胸に顔を埋めていた。
黒衣にごしごしと涙をこすりつけると、後頭部を優しくさすられた。
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