278:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/01/14(土) 22:25:35.53 ID:TikXGamK0
視線を下ろすと、湿気を帯びてかすかに潤んだ二つの翠玉が美琴を見上げてきた。
「わた、私も、みことが大好きだから。だから、もしもとうまに泣かされたらすぐ教えて
ちょうだい? ヨハネに協力してもらって、『竜王の殺息』を浴びせてやるんだから」
「……いや、さすがにそれはいかがなものかと。あいつは一応、そのせいで一度記憶を
失っているわけであってだね」
「ステイルは黙ってて」
「はい」
ステイルのツッコミは人間としての道義に適った行為だったが、泣く子と嫁の前では
一義的な正しさなど吹けば飛ぶ砂の城である。
心中で合掌しながら、美琴は泣く子の次なる発言を聞き漏らすまいと耳をそばだてた。
「私、わたし…………よかった」
「なにが?」
「みことに会えてよかった。負けた相手が、みことでよかった。あいさやいつわたちには
悪いけど、とうまの一番になってくれたのが、みことでよかった」
「――――っ」
鼻孔の奥がツンと痛んだ。
涙腺を刺激する言の葉の数々が、鼓膜を素通りして直接脳に、心臓に響く。
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