379:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 22:19:05.86 ID:GFjxftzi0
会場中に散らばった紙切れが、統率の取れた渡り鳥の群れと化してステイルの掲げた右手に集る。
荒く息を弾ませながら都合千枚のカードの束を器用に懐に収めた。
この収納テクニック一つとっても、ステイルの死活に関わる重大な企業秘密であるというのに。
「ぜぇ、はぁ、あ、ありがたく受けとっておくぞ、クソ野郎どもッ! この借りはいつか必ず」
「ステイル」
「……今度はなんなんだよもう!」
半ば泣きの入った叫びの矛先は、八つ当たりのようにインデックスに向いた。
三度ステイルの注意を引くと、彼女が最初に掴んでいた、回収し損ねたカードが差し出される。
「裏、見てみて」
蕾の向日葵が夏の訪れを待ちきれずに弾けたような、目眩を覚えるほどまばゆい笑顔だった。
唾を飲み、言葉を失って、言われるがままに最後のカードを受け取る。
『お前とは初めて会ったときから燃やされたり殴ったり、そんな仲だったけどさ。俺は一応、お前のこと友だちだ、仲間だって思ってるからな。俺の大事な女の子を任せられる、世界でただ一人の神父さんだ。……長々と改まったことばっかり言うのも変な話だから、このへんにしとくか。とにかく結婚おめでとうな、ステイル! ――――上条当麻』
「なんだ、これは」
裏面にびっちりと汚い字で記されていたのは、祝福のメッセージ。
呻くような声で、ほとんど無意識のうちに内容を読み上げていた。
ステイルの呻きに呼応するように、ガシガシと髪を掻き毟る音が静寂を裂く。
静寂――――そういえば混乱と興奮の坩堝だったはずの会場は、いつの間にやらすっかり静まりかえっていた。
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