72:>>1 ◆weh0ormOQI[saga]
2011/12/27(火) 22:51:44.32 ID:l5SKq28Z0
女が我に返った時、世界は夜だった。
より正確には一面の闇だった。
そして、物音一つしない静寂だった。
女は慌てて、目と耳が健在かどうかを確かめるべく顔に手を当てる。
その時ようやく、身体がびくとも動かないことに気が付いた。
動かないどころか、一切の触感がない。
皮膚が空気に触れているという、人間ならば当たり前すぎて普段は意識しないような、
そんな感触すらまったく脳まで走ってこない。
もしかして自分は死んだのだろうか。
だとしてもまったく無理のない状況だった。
直前の光景を回想してそう結論づける。
ああそうか、死んだんだ。
数多くの不幸を産んで、数多くの破滅を呼んだ呪わしきこの身に、ようやく然るべき
しっぺ返しが降りかかったのだ。
そう思うと不可思議な安堵感に溜め息が漏れる。
もうこれ以上、誰かを傷つけずに済む。
これでもう、“あの人”の死に怯える必要など――――
「――――――――――――あ」
最初に帰ってきた感覚は、凍りついたような、血液の鈍い鼓動だった。
「――――す、て」
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