過去ログ - とある神父と禁書目録
1- 20
76:>>1 ◆weh0ormOQI[saga]
2011/12/27(火) 22:55:31.66 ID:l5SKq28Z0


「……確かに今日は、僕の初恋の女の子の命日だ。悲しむべき日だ」


彼の好きだった人。
自分ではない自分。
自分では代わりになどまかり間違ってもなれはしない、彼の唯一の少女。
それでも、それでも彼は。


「それでも僕は、“君”に会えたこの日がとても愛おしい。君が生まれてきてくれたこと
 が嬉しい。だからこそ今日を君の、『もう一つの誕生日』にと決めたんじゃないか」


ああ、そうだった。
去年は可愛らしいサイズの懐中時計を贈られた。
『君に出会えてよかった』。
そう言って彼は、大好きだった女の子と同じ顔をした別の女に、笑いかけてくれた。
この男性(ひと)を愛しているという自覚が、決定的なものへと変わった瞬間だった。


「だから、これが今年のプレゼントだ。開けてみてくれ」


目の前に小さなケースを差し出される。
男性らしいごつごつした右手に載せられた紺色の、二つ開きの小箱。
いつの間にやら胴を締めつける痛みが消えていた。
当たり前だ、彼の右手は自分の眼前にあって、左手は――――もう無いのだから。

自由になった両の腕を小刻みに、痙攣したようにがくがく震わせながら、掬い上げる
ように『プレゼント』を受け取る。
深呼吸を一度、二度、三度。
蓋に手をかける。
力を込めた指が、中身が見えるまであと一センチというところで止まった。
すがるような目で彼を見やる。

見上げた長身は、やはり一年前のように笑って見守ってくれていた。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
422Res/296.80 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice