過去ログ - 魔王「異世界でネトゲしてくる」
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12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/01/07(土) 18:50:02.07 ID:g2OIaAUDO


「動かし方を悟るまで随分と苦しめられてしもうたが、箱形の絡繰りに映し出されたものはそれはもう!
文字が読めぬから有意の抽出を図る魔法を使って、見た!
そこにあるのは、どれもこれもわらわの認識を改めさせられるものばかり!
いんたーねっとえくすぷろーらー、とやらや、いくつか使えぬものも混ざっておったが、その中で一際目を引いたのは“ねっとおんらいんゲーム”じゃ!
わらわはそれがしてみたい!」

ということで異界に行ってくる。
そう言い残して、主君は嵐の如く慌ただしさで術式を紡ぎ、忽然と消えた。




「――――ということがあったのよ」

大理石の広間に居並ぶ同胞の前で、側近は見聞きしたことを語り聞かせていた。
王の間であるにもかかわらず、玉座は空席。
玉座には、すがりついて泣き崩れている幾多の同胞。
積み重なり過ぎて、巨大な芋虫が蠢いているようであった。

主君の去った後、ほぼ全ての同胞が決起して、選出された幾人もの同胞が捜索に赴いた。
しかし、主君の行方はようとして知れない。

「今頃、どこで何をしているやら」

語り聞かせている間から、居並ぶ同胞らの大半が放心していた。
彼らに向けて小さな溜め息をひとつ。
啜り泣く声の絶えない大広間、一戸建ての住宅十棟にも及ぶ高い天井を仰ぎ見て、溜め息交じりに呟いた。
城の宝物すら持たず、無一文なのではなかろうか。
主君の力をもってすれば、金の問題など大抵は解決してしまうだろう。
だが、行き先は異界。
この世界の常識が通じず、また未知数な世界も多い。
あまりあちらの世界に迷惑をかけてほしくないものだ。
そもそも、普通の神経なら望んで関わろうとはしないのだけど。

何をかいわんや、主君は普通ではない。
そんな見ててはらはらするところも好ましくて、しかしやっぱり心配だ。
――ああっ、心配だ心配だ心配だ心配だ。
傍目には呆れているように見えて、心中穏やかではない。
冷血、鉄面皮、などと揶揄される彼女だが、主君に関しては壮絶な葛藤を繰り広げている。内心で。
――どうしようどうしよう、あんなに可愛い魔王様がひとりいたら確実に狙われるわ。
少女趣味の変態男だけじゃなくて、同性ですら魅了してしまうかもしれない!
あの方の同性への危機意識が薄いことをいいことに、調子に乗る輩が出るとも限らないんじゃ……!?
くゥゥゥゥッ! 犯罪者予備軍めがァァァァァァァッ!!
そのようなこと、絶対に! 絶対に許さんぞ!
ああでも、あの方を力づくでどうにかできるなんてまず……。
いやいや、聡明なようでいて案外抜けておられるところがおありにあるし……。
常人の感性を持つ私ですら、十人に分身したら十人があの方を狙うもの! いつも襲いかかるのを我慢してるくらいだし……。
変態ならどうなってしまうことか!
ああ、変態の毒牙からあの方をお守りするにはどうすれば……。
心の中で頭を抱え悶絶して――唐突に閃く。
そうだ、あれを使えば……!
側近は大広間を辞して、競歩で長大な廊下を進んでいく。
使わなくなったからと処分するよう渡された廃棄品。
もしもの時のためにとっておいた古い下着!
他にも、あの方が長く身につけていたものを使えば、探知できるはず!
辛抱たまらずほくそ笑む。
――変態は近づかせない。
決意を胸に、側近は大理石にこつん、こつん、と足音を響かせていった。


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