31: ◆G/oQfYP4bzP0[saga]
2012/01/30(月) 19:38:21.38 ID:V83xhbCmo
少年が1人立っていた。
彼の目の前には死体が転がっている。
その死体は死体と言われなければただ眠っているだけの少女と誰がみても勘違いしそうなほど安らかな顔をしていた。
そしてその顔は少年のかつて愛した口調がうざったい少女と同じだ。
どうやったかは彼自身もわからない。
ただ、確かな事は彼はこれで5000人の少女の命を苦しみもなく一瞬のうちに止めてきた。
自分を被害者だとは思ってはいない。
ましてやヒーローみたいなやつが現れてぶん殴ってでも止めてくれるのを待ってたわけでもない。
では何故彼は愛した少女の姉妹とも言える少女達を殺すのだろうか?
答えは簡単だ。
彼がやらなければこの少女達は息絶えるその最後まで苦しみながら彼が5000人殺すまで何人も作られては殺される、愛した少女と同じ顔をした少女が頭をブチ抜かれ、脳をブチまけ、汚いただの肉片になるような死に様はもうみたくない。
だから苦しまないように自身が手を下す。
無敵なンて言葉に興味はねェ。
彼はかつて唯一の少女に優しく愛しく柔らかな笑顔でそう言った。
そんな彼が何故今更無敵を目指しているのだろうか。
たった一人の少女すら救えず、たった一人の少女の死にとらわれているこの世界で誰よりも弱い彼が無敵を目指す理由はなんだろう。そう問いかけてみた。
持て余す能力をもったから最初は神になろうと思った。
神になれば間違いが起きてもその責任が取れると思った。
だけど神になるには犠牲が必要だと言われた。
自分が傷つくだけならいい、その過程で死んでしまってもそのほうが楽だとすら思った。
問いにぽつぽつとそう言い残し、彼は……学園都市が誇る最強の第一位、一方通行は死んだ。
真っ白な少年の亡骸を愛おしそうに見つめるのは彼が殺し続け愛し続けた少女と同じ顔をしている。
やりきれないという表情で遺体から目を逸らすのはツインテールの少女。
静かに涙を流しながら微笑むのは頭の花飾りが特徴的な少女。
座り込み顔を伏せ嗚咽を漏らすのは美しい黒髪の少女。
どれも少年が大事にしていた友人であり、彼の数少ない理解者でもある。
少女達にとって彼はそれぞれにとって大切な友人であり、気の合う喧嘩友達であり、恩師であり、大好きな人である。
それぞれが心に隙間を感じ、その隙間につけこまれ闇へと落ちていく事になるのを今は誰も知らない。
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