過去ログ - 打ち止め「失恋でもしたの?」一方通行「……かもな」
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95:結標と一方通行[saga]
2012/01/14(土) 00:10:04.67 ID:4E3ekzFM0


「そろそろ手は出したのかしら?」

「あ゛ァ?」

眉間に皴を寄せて、随分懐かしい表情ね。
今すぐにでも噛み殺そうっていう凶暴性バリバリのその顔。

「冗談よ。貴方にそんな度胸無いものね」

「喧嘩を売ってンなら買ってやるぜ結標?」

「いやぁねぇ。相変わらずすぐにムキになって。余裕の無い男は嫌われるわよ?」

「チッ」


手を出してるとは思ってない。
あの純粋無垢な女の子を宝物のように守ってきた貴方が、あの子を神聖視してる貴方がそんなことするはずもない。
知ってて聞いたのはちょっとしたイタズラ。
昔よりもいくらか柔らかくなった表情。それでも変わらない生き方。


「ふふふ、相変わらずそうね。あの子達の為にそうやって眉間に皴寄せて今も戦ってるんでしょ?」

「……」

「羨ましいわね」

「羨ましい?」


表の世界に行ったからと言って完全に闇の世界から途絶されるわけではない。
土御門から定期的に流れてくる『裏』の情勢から伝わってくるのは、コイツが今尚闇の中での戦いを止めてはいないということ。
表の世界に身をく風を装って、裏で何度も暗躍をしていることを土御門も、海原もそして闇との関わりが殆ど無くなった私も知っている。
それが全て『あの子達』を守る為というコイツの人生すべてを掛けた目的に終始していることも知っている。
それはきっと歯を食い縛るような苦難なのだろう。コイツの身から出た錆とはいえ、逃げ出すことだってできたのに。


「そうやって身体を張って守ってくれる人がいるのって、何だか憧れちゃう」

「随分と乙女チックな夢憧れ語ってンじゃねェか結標」

「失礼ね。これでもまだ乙女心は捨ててないつもりよ」


一息にグラスを空けると、零れ出た吐息が熱い。
既にそれなりに杯を重ねているのだった事に今更気付く。
不意に途切れる会話。沈黙のせいか、必要以上に敏感になった感覚が些細な信号も逃すまいとチリチリと焦れ立つ。
アルコールのせいでふわふわとした舌が沈黙を厭うように言葉を転がす。


「正直ね、最近気が抜けてるの。仲間を助けて、表の世界に一応だけれど戻ってきて。大学は結構楽しいわ。友達だってできた」


自分には似合わないと思ってた当たり前の世界はすんなり踏み込めてしまって。
少しだけ拍子抜けしたのを覚えている。

「小萌とお休みの日にお料理の練習したりショッピングに行ったり」

それは憧れてた平穏だったり、日常だったりするのだけれど。

「でも何か覚束ないのよ…大きな目標が消えちゃったからかな……だから少し貴方が羨ましい。貴方に守られる子達が羨ましい」


誰かの為に必死になれることも。
誰かに必要とされて守られることも。




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