58: ◆bR/Hsa44HA
2012/02/21(火) 18:03:45.20 ID:mfu5Yv+T0
―『要塞』上空。
空を漂うばかりのセシウムに、異変が起きていた。
あるものは体が大きくなり。そしてあるものは小さくなる。
吸収し、吸収されているのだ。
そして大きくなったセシウムは意識を持っていたかのように目を覚ます。
やがて米粒大に収縮されたセシウムは、漂うのをやめ、地面に降り立った…。
「…」
米粒の形をしたセシウムは、無言のまま、傍らの米の死体を見つめた。
背中の切り傷が、痛々しい。切り口が脊髄にまで達していた。
そして、今まで沈黙を守っていた米セシウムが動き出した。
ゆっくりと手を伸ばし、死んだコメを包み込む。
その幻想的な風景は、まるで水色の蝶々が、満身創痍の戦士を癒すかのよう。
周囲には薄く光る水色の球がいくつか浮いており、その光は儚くも、恐ろしい。
包み込まれた死体は、ゆっくりと浮かび上がる。
体の隅々まで光が行きわたり、背中の致命傷であろう傷も修復されてゆく。
「スー…ハー…」
医者はこの光景を見て目を疑うだろう。
今までピクリとも動かなかった米が、息を吹き返したのだから。
だんだんと顔色がよくなり、息も整ってくる。
そして最後に、目を開く。
全てが終わったころには、コメ型のセシウムはいなくなっていた。
ただ、消えただけではない。
「…」
乗り移っていただけである。
災害の産物である汚染米が、こうして生まれた。
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