過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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100:にゃんこ[saga]
2012/02/09(木) 19:50:04.06 ID:IyRJsiHu0
その考えは、嬉しくはある。
どんな形でも、私が梓に必要とされるのは嬉しい。
でも、それ以上に寂しかった。
私達の体温、肌に触れる物しか信じられないって考え方は、
私にとっても、梓にとっても寂し過ぎるじゃないか。
それじゃ私達を繋げてくれた音楽が、意味を失くしてしまうって事になるじゃないか。

だから、私はそれを言葉にしようと思った。
上手く伝えられる自信は無いけど、どうにか言葉にして届けたかったんだ。


「さっきさ、私、ドラムの腕が落ちちゃってるかも、って言ったよな……?
忙しかったのは本当だし、卒業前より腕も結構落ちちゃってるって思うよ。
でも……、でもさ……、私、ドラムはちゃんと続けてるんだぜ……?」


言い訳っぽかったとは、自分でも思う。
梓が悲しそうな顔をしたから、無理な言い訳をした。
そう思われても仕方が無かったけど、嘘は一つも言ってなかった。
途轍もなく嘘っぽいかもしれないけど、嘘なんかじゃないんだ。
その想いは少しでも梓に伝わったんだろうか……?

梓と繋いでる手のひらに汗が滲み出て来るのを実感する。
勿論、夏の熱気のせいなんかじゃない。
緊張から出た汗が手のひらを濡らしていく。
汗に濡れた私の手を握る梓は嫌な気分になってるんじゃないかって、
そんな事を考えてる場合じゃないのに、また汗と一緒に不安が溢れ出て来る。

不意に梓が私と繋いでいた手を離した。
一瞬、自分が泣きたい気分になるのを感じる。
やっぱり私の言葉は信じてもらえなかったのか?
嫌な汗に濡れた手なんて繋ぎたくなくなったのか?
ひどく、胸が痛い。

でも……。
梓は離した手ですぐに私の手を掴み、
私の手のひらを上に向けてから私の方に顔を向けた。
その顔には晴れやかとまでは言えなかったけど、優しい微笑みを浮かべていた。


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