過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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101:にゃんこ[saga]
2012/02/09(木) 19:50:38.58 ID:IyRJsiHu0
「分かってますよ、律先輩……。
練習嫌いな律先輩ですけど、
ドラムが好きなんだって事は私だって分かってます。
腕が落ちてるかもって律先輩から聞いて、
さっきは驚きましたけど……、不安だったんですけど……、
でも……、律先輩と手を繋いで気付けました。
ドラムの練習を続けてくれてるんだな、って。
だって、ほら……」


言いながら、梓が右手を伸ばして私の右の手のひらに触れる。
主に指の付け根……、まめになって皮の剥けて所を触りながら、梓はまた微笑む。


「もう……、律先輩ったら……。
練習……してるじゃないですか……。
こんなにまめも作って、厚くなってるはずの皮まで剥けてしまうくらい……。
律先輩ったら、もう……」


胸が一杯になってしまったんだろうか。
それ以上、梓は言葉を続けなかった。
言葉はもう必要無いと思ったのかもしれない。

確かにそうだった。
私がいくら言葉にしても言い訳にしかならなかったのに、
私の手のひらは私の言葉以上に私の想いを梓に届けてくれた。
梓の言葉通り、私の手のひらは最近の猛練習で結構ボロボロだ。
女子大生としてはどうかと思うけど、梓を安心させられたならそれでいいのかもな。

それにしても、身体は言葉以上に饒舌……とはよく聞く言葉だけど、
自分自身が実際に経験する事になるなんて思ってなかった。
手を繋ぐ事で言葉以上に想いを届けられるなんて、
世界はまだまだ私の知らない事ばかりなんだな……。


「あ……」


私が何かを言う前に、梓がまた私のボロボロの手を握ってくれた。
照れ臭い気分になりながらも、私は手のひらに少し神経を集中させてみる。
私ほどボロボロってわけじゃなかったけど、
梓の左手の指先には小さなまめがいくつかあるみたいだった。
私よりボロボロじゃないのは、
梓の練習量が少ないからじゃなくて、逆に普段から継続して練習してる証拠だ。
私の方がボロボロな理由は、少しブランクがあったせいで、
急な猛練習の久々の負荷に手のひらが耐えられなかったせいだろうな。

そんな事よりも、やっぱり梓は頑張ってるんだな、って私は思った。
真面目な梓の事だから疑ってなかったけど、こうして肌で感じると余計に思う。
梓は音楽の事が好きなんだって。
こんな小さくて可愛らしい指先にまめを多く作るくらい、梓は音楽が大好きなんだよな。


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