過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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103:にゃんこ[saga]
2012/02/09(木) 19:51:45.01 ID:IyRJsiHu0
「いいですね、セッション!
私、すっごく楽しみです! 上達した私の腕前、律先輩にも見せてあげます!
あ、でも……」


「どした?」


「練習してるのは信じますけど、
律先輩のドラムの腕ってどれくらい落ちてるんですか?
私達とちゃんとセッション出来るレベルなんですかね?」


「中野のくのやろー!」


「きゃー、おたすけー!」


私が笑って梓にフロントネックロックを繰り出すと、
梓も笑顔で悲鳴を上げながら私に技を仕掛けられてくれていた。
懐かしい梓とのじゃれ合いだ。

嬉しかった。
擦れ違いそうだった私と梓だったけど、音楽の力で一つにまとまろうとしてる。
だから、きっと大丈夫。
皆だって音楽が大好きなんだ。
何もかも解決するってわけじゃないけど、
皆でセッションをすれば、心を一つにして笑顔にする事くらいは出来るはずだ。
何だったら純ちゃんと憂ちゃんにも参加してもらって、
全員参加の大演奏にしてしまうのも楽しいかもしれない。
和にはボーカルをやってもらうってのも面白いだろう。

その時の私はそんな事を考えてたし、
梓も同じ様な事を考えてくれてたはずだ。
私達の笑顔に嘘は無かった。

でも、その時の私は胸に湧き上がってた違和感の正体を、もっと考えておくべきだったんだと思う。
楽しくて、嬉しかったから、私はその違和感から目を逸らしてたんだ。
考えるまでもない事だと思っていた。

梓とじゃれ合いながら胸に湧き上がった違和感……、
それはチョークスリーパーを得意技とする私が、
どうしてその時だけ梓にフロントネックロックを仕掛けたのかって事だ。
いや、その違和感の正体はその時にはもう分かってた。
フロントネックロックを仕掛けた理由は単純。
梓に右手を強く握られていて、左腕しか使えなかったからだ。
左腕しか使えないとなると、私的に使える締め技はフロントネックロックしかない。

そして……。
梓はフロントネックロックを仕掛けられながらも、
私が技から解放するまで、繋いだ手を一度たりとも私から離そうとしなかったんだ。
私達の心を繋いだ手を……。
まるで。
音楽や言葉よりも、私の体温だけをずっとずっと強く信じてるみたいに。


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