137:にゃんこ[saga]
2012/02/18(土) 14:51:11.12 ID:9LZ3haPw0
悲しい事だけど、私は一つ思ってる事がある。
ムギはきっと完全には私達の絆を信じ切れてないんだと思う。
それはムギのせいじゃない。
どっちかと言うと、私達のせいかもしれない。
ムギはいつも皆に美味しいお菓子を食べさせてくれて、給仕までしてくれる。
それは純粋に嬉しい事で、私達はそんなムギに甘え切ってた。
ムギも楽しくて私達の給仕をやってくれてるはずだけど、
そのせいで今は普段以上に不安が増して来てるんだろうと思う。
理由は単純。
この世界から生き物が居なくなってから三日、
簡単には私達にお菓子を提供出来なくなったせいだ。
勿論、クッキーや飴なんかは大丈夫だけど、
冷蔵庫が使えなくなった上に夏の湿度のせいでケーキ系は全滅だった。
アイスクリームどころかチョコレートですら溶けちゃってる状況だしな。
だから、今の所、ムギは私達にあんまりお菓子を提供出来てない。
当然、私達がムギにお菓子だけを求めてるわけじゃない。
付き合いの浅い大学の友達にはそう見える事もあるみたいだけど、絶対にそんな事があるもんか。
お菓子をくれなくたって、私はムギと一緒に居たいし、一緒に遊びたいんだから。
勿論、澪や梓、お菓子に目が無い唯だってそう思ってるだろう。
だけど、大学の友達が遠くから見てて、
私達とムギの関係がお菓子ありきの関係に見えるって事は、そういう要素があるって事でもある。
もしかすると、私達が知らないだけで、
ムギはクラスメイトの冗談を聞く事があったのかもしれない。
「軽音部の皆って、ムギ本人よりムギのお菓子が目当てなんじゃないの?」って。
そんな他愛の無い冗談を。
勿論、それは単なる悪意の込められてない冗談だ。
そう見える事もあるから訊ねてみただけ、ってそれだけのはずだ。
でも、悪意が無くたって、冗談だって、傷付いちゃう事はある。
特に心の片隅で思わなくも無かった事を指摘されてしまったら、
本当にそうなのかもしれないって嫌でも考えてしまうものだから……。
だから、多分、ムギは今とても不安になってる。
今はまだ残りがあるから大丈夫だけど、
これから後、お菓子を完全に提供出来なくなってしまったら、
自分には存在価値が無くなるんじゃないか、って不安になってるんだ。
そんな不安があるから、小さな失敗でも気になり始めてるんだろうと思う。
何とかしてやりたいって思う。
その責任の一端は、ムギの好意に甘え切ってた私にもあるんだ。
ムギの不安をもっと和らげて、信じさせてあげたい。
何も持ってなくたって、私達は仲間で居られるんだって。
それが部長だった私に出来る最善の事だ。
私はもう一度だけムギの頭を撫でてから、出来る限り明るく言った。
「そういや、どうして鍵置き場に私の自転車の鍵があったんだ?
これまで居間の鍵置き場に、自転車の鍵を置いた事は無かったはずなんだけど……。
家の何処かに落としてたから、母さんが鍵置き場に入れておいてくれたのかな?
本当、危うくムギを無駄に待たせちゃう所だったじゃんかよ……」
お菓子の事については触れなかった。
いきなりお菓子の話題になるのはあんまりにもわざとらし過ぎるし、
これからはお菓子以外の事でもムギに感謝してるって事を伝えてった方がいいと思ったからだ。
こんな時だからこそ、普段以上にムギの事を大切にしたい。
まだそんな私の気持ちは伝わってないだろうけど、ムギが笑顔で私の質問に応じてくれた。
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