過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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143:にゃんこ[saga]
2012/02/20(月) 18:09:29.66 ID:5SRVmQT60
悔しさを隠し切れないまま、私が母さんの自転車に乗り、
ムギが聡のマウンテンバイクに乗って、実家から飛び出していく。
最初は私が聡のマウンテンバイクに乗ろうかと思ってたんだけど、
ムギがマウンテンバイクに乗りたいみたいだったから、それはムギに譲った。
別に誰がどっちに乗ったっていいわけだしな。
まあ、ムギにマウンテンバイクってのは、究極的にミスマッチだけどさ。

私は自転車でムギの家に向かいながら、
何となく一つ馬鹿みたいな思い付きをムギに発案してみた。
「誰も居ないんだから、道路の真ん中を通ってムギんちまで行こうぜ」って、
そんな我ながら馬鹿馬鹿しい発案をしてみたんだ。
根が真面目なムギだけに、最初は複雑そうな表情をしてたけど、すぐに頷いてくれた。
「面白そう。折角だしやってみようよ」って言いながら、笑ってくれた。

ムギも私と同じに悔しかったんだと思う。
こんな状況になっちゃって、理不尽に巻き込まれて、
そんな現状に対して、何かの抵抗をしてやりたい気分だったんだろう。
これはまだ何も出来てない私達がやってやれる、小さな小さな反抗なんだ。
馬鹿みたいだけど、そんな悪ふざけでもしなけりゃ、やってけないよな……。


「行くぞ、ムギ!」


私は意を決し、大声を出して道路の真ん中に自転車で飛び出した。
すぐにそれに続き、ムギも道路の真ん中を通り始める。
誰も居ない事は分かってるのに、何だか緊張する。
悪い事をしてる、って感じのちょっと後ろめたい気分なんだと思う。
実際はそんなに悪い事じゃないのに、ついドキドキしちゃってるのは私が小市民だからかな。

でも、私よりもずっと真面目なムギは、もっとドキドキしてるらしい。
ムギの家まで先導するために私を追い越すと、
緊張を和らげるためか軽く鼻歌を歌い出していた。
曲は『Honey Sweet Tea Time』みたいだった。
放課後ティータイムの曲の中で、唯一ムギがメインボーカルを務めた曲だ。
やっぱり、持ち歌の方が鼻歌としては使いやすいんだろうな。

しばらく、ムギの鼻歌を邪魔しないよう、黙ってムギの後に続いた。
結構遠いムギの家だけど、自転車を使えばそんなに時間が掛かるわけじゃない。
ムギが家に取りに行きたいって言ってた何かもすぐに見つかるはずだ。
その後は和に頼まれてた街の地図を本屋から拝借し、
それとドーナツ屋に寄ってから、早めに学校に戻ろうと思う。
夕食の準備をしておきたいし、純ちゃんにドーナツの差し入れもしたいからな。
スーパーじゃないオールスターパックに純ちゃんは喜んでくれるかな……?


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