145:にゃんこ[saga]
2012/02/20(月) 18:10:49.14 ID:5SRVmQT60
「今、私もそう考えてた所なんだよ、ムギ。
懐かしいよなー。ムギって昔は自転車に乗れなかったもんなー」
ちょっと誇張して言って、ムギをからかってみる。
怒られるかと思ってたけど、ムギは笑顔になって続けた。
「そうだよね。
私、りっちゃん達のおかげで、自転車に乗れるようになったんだよね。
そのおかげで今だって自転車に乗れてるんだもんね。
本当にありがとう、りっちゃん」
からかったつもりだったのに、まさかお礼を言われるとは思わなかった。
くすぐったくて、それ以上に申し訳ない。
私は「どういたしまして」と言う事しか出来なかった。
頬を軽く掻いて、私は照れ臭さと申し訳なさを隠して、話を少し変えてみる。
「そういや、ムギって自転車に乗ると鼻歌を歌ってるよな。
ひょっとして、そういうのが夢だったりしたのか?」
「うん、やっぱり、自転車って言ったら鼻歌ってイメージがあるんだ。
爽やかな日曜日、鼻歌交じりに自転車に乗ってお出かけなんて素敵よね。
ずっと夢だったし、それを叶えられてすっごく嬉しいの」
「これぞまさしく『ビューティフル・サンデー』ってやつだな。
今日は日曜日じゃないけど、ムギの言う事は私も分かるよ」
言ってから、ちょっとだけ迷った。
今日って本当に日曜日じゃなかったっけ……?
夏休みだからってのもあるけど、
生き物が居なくなってから、本気で曜日の感覚が無くなってきた。
えっと……、梓と待ち合わせてたのが三日前の火曜日だから……、
うん、今日は日曜日じゃないか。
人は周囲の状況の変化で時間経過を実感するものだって話を、和から聞いた事がある。
その時は放課後ティータイムが全然変わらないから、
時間の流れが実感しにくい、って皮肉みたいに言われたんだけどな。
でも、和の言う通りでもある。
ずっと同じサイクルで同じ様な生活をしてたら、
時間経過も曜日の感覚も分からなくなって来ちゃうもんだよな……。
曜日毎にアクセントを付けたスケジュールでも考えてみるか……。
そこまで考えて、私は何だか嫌になった。
少しずつこの状況を受け容れようとしてしまってる自分を。
何を考えてるんだよ、私は……。
最悪、この世界を受け容れなくちゃいけなくなったとしても、
それまではこの状況の打開策を考えなくちゃいけないじゃないか。
和とも約束したじゃないか。
諦めちゃ、駄目じゃんかよ……。
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