過去ログ - 律「閉ざされた世界」
1- 20
150:にゃんこ[saga]
2012/02/21(火) 19:33:50.82 ID:2E5Cm4Az0
琴吹紬……、あだ名はムギ。
中学生の頃にどう呼ばれてたのかは知らないけど、
高校で一番最初にそのあだ名を付けたのは私だった。
澪とムギと私で軽音部の新入部員を待っていた頃、
何となく付けてみたあだ名だったけど、ムギがとても喜んでくれたのは覚えてる。

それくらい、ムギは私のした事を思い出にしてくれてるんだ。
それはとても嬉しいんだけど、とても照れ臭い。
珍しくムギが何度も言葉を止めたのも分かる。
こんなの流石のムギだって照れ臭いよ……。


「あの……、えっとさ……、ムギ……。
その……、何だ……」


ムギよりも遥かに照れ臭いのに弱いのが私だ。
多分、軽音部の中じゃ、一番褒められ慣れてないしな。
だから、何かをムギに伝えようとして、言葉が全然出せなくなっちゃっていた。
かっこわりー……。
ライブのイメージトレーニングなんかじゃ、
大勢のファンに駆け寄られても、クールに応対する練習してたんだけどなあ……。

ムギが頬を赤く染めたまま、私の次の言葉を待っている。
私は何かを言おうとして言葉にならなくて、頭の中がグルグル回っちゃって……。
気が付けば、一言だけ言葉にしていた。


「ありがとな……」


何に対しての『ありがとう』なのかは自分でも分からない。
褒めてくれて『ありがとう』なのか、
『Honey sweet tea time』を一番好きでいてくれて『ありがとう』なのか……。
自分でも全然理に適ってないと思ってしまう言葉だったけど……、
ムギはそれに対して、「うん!」と頷いて晴れやかに笑ってくれた。

そのムギの笑顔を見て、私は何となく考えていた。
そっか……。
多分、私が言った『ありがとう』は、
『今まで一緒に居てくれてありがとう』って意味だったんだ……。
何となく考えてみただけの事だったけど、それは間違ってない気がした。

うん、ありがとう、ムギ。
こんな状況だからってだけじゃなく、
ムギが今まで一緒に居てくれたおかげで楽しかったし、心強かった。
だから、本当にありがとうな……。

私はそれを言葉にせず胸に秘めて、ムギと並んでしばらく自転車を走らせる。
二人とも何も言わない。
言葉を失くしたわけでも、喋りたくないわけでもない。
二人とも、お互いが傍に居る事だけを、感じていたかったんだと思う。
たまに顔を合わせて、笑い合う。
それだけの事が、とても嬉しかった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
657Res/1034.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice