152:にゃんこ[saga]
2012/02/23(木) 20:13:23.01 ID:vT0us/C50
◎
「それにしても、よくあんないっぱいあったもんだよなー」
パンパンに膨らんだリュックサックを背負って、自転車を漕ぎながら私は呟く。
かなり肩に来る重さだけど、今後の事を考えると贅沢は言ってられない。
特にムギは私以上に大きなリュックサックを背負ってるんだ。
これで文句を言っちゃ罰が当たるってもんだ。
「非常時の事を考えて用意してくれてたらしいの。
そんなに必要なのかな? って前から思ってたんだけど、
実際こうして役に立つ日が来たんだから、人生、何が起こるか分からないよね」
ムギが苦笑しながら呟く。
その顔に少し元気が無いのは、
やっぱり誰の姿も無い自宅を目の当たりにしてしまったからだろう。
期待しちゃいけないって事は、ムギだって分かってたと思う。
これだけ捜しても、私達以外の姿は何処にも見つからないんだ。
自分の家族だけ無事に居てくれるって考えるなんて、都合が良過ぎる。
分かってる。
私だって分かってるつもりだった。
でも、我ながら馬鹿だなって思うんだけど、
自分の目で確認しなきゃ、期待や希望ってものは持ち続けちゃうものなんだよな。
私なんか自分の家族を自宅に見つけられなかったのに、
ひょっとしたら、ムギの家族だったら無事かもしれないって期待しちゃってたんだ。
ムギの家族は金持ちだ。
どれくらい金持ちなのかはしらないけど、
ただ事じゃないくらいの金持ちではあるらしい。
別荘だって何件も持ってるんだしな。
だから、私は馬鹿みたいな期待をしてた。
金持ちのムギの家族は前々からこの世界……、
まあ、国どころか県からも出てないから、他の地域の事は何も分からないけど、
とにかくこの世界から生き物が全て消失するって現象を予期してて、
今もその現象への対策を自宅の対策本部かなんかで練ってくれてるんじゃないかってな。
勿論、そんな事があるはずも無かった。
そりゃそうだ。
大体、こんな状況になる予期をしてたんだったら、
大切な娘のムギをみすみす外出なんかさせるかっての。
分かっちゃいたけど、期待せずにはいられなかった。
自分の力じゃどうにもならない気がして、他の力のある誰かに頼りたかったんだと思う。
こんな状況、自分達じゃどうする事も出来ないから……。
だから……、誰かに助けてほしかった。
誰かに救ってほしかったんだ……。
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