過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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163:にゃんこ[saga]
2012/02/25(土) 19:44:40.12 ID:60mH76PP0
でも、澪が大騒ぎしてくれたおかげで、骨折した私の方は落ち着いてた。
痛いはずなのに、慌てる澪の姿を見てたら、そんな痛さなんか吹っ飛んじゃってた。
誰かに先に慌てられたら、傍から見てる人間は冷静になっちゃうってのは本当だよな。
何となく、澪にはそういう強さ……、じゃないか、強味がある奴だって感じる。
恐い事を素直に恐がれる事も強味の一つなんじゃないだろうか。

気が付けば、ムギも少し微笑んでるみたいだった。
私の骨折の話を知ってるわけじゃないだろうけど、
私の話の中に思い当たる事がいっぱいあったんじゃないかな。
私はムギから一メートルくらい離れた場所で足を止め、ムギの次の言葉を待つ事にした。
少し経って、「そうだね」とムギが笑って言った。


「澪ちゃんには悪いなって思うんけど、私もりっちゃんの言う事が分かるな。
澪ちゃんが緊張したり恐がってくれると、何か肩の力が抜けるよね。
実はね、高一の学園祭の時なんだけど、私もすっごく緊張してたの。
ピアノの発表会なら何度か経験もあったんだけど、
ライブは初めてだったし、雰囲気も全然違うじゃない?
だから、口にはしなかったけど、すっごく恐かったな……。

でも、私なんかより澪ちゃんの方がずっと緊張してたし、不安な表情も見せてくれてたよね?
そんな澪ちゃんを見てるとね、安心出来たんだ。
緊張してるのは私だけじゃない。
不安なのは私だけじゃない。
澪ちゃんも緊張してるし、きっと唯ちゃんもりっちゃんも緊張してて不安なんだって。
そう思えたから、高一の学園祭も頑張れたの。

勿論、今だってそう。
澪ちゃんが一番に恐がってくれたおかげで、私も少しだけ落ち着けたの。
澪ちゃんが恐がってくれなきゃ、もしかしたら私の方が閉じこもってたかも……」


それはムギだけじゃないって思った。
私にも、多分、他の皆にも同じ事が言える。
和……はどうかは分からないけど、
それ以外の皆なら、澪と同じ事をした可能性があったはずだ。
澪が閉じこもらなきゃ、私だってどう転んだか分からない。

ムギと二人で顔を合わせて苦笑する。
昨日までの澪の姿は、あったかもしれない私達のもう一つの姿なんだ。
だからこそ、私も澪じゃなくて、
もう一人の自分を不安にさせたくなくて、澪と話せなかったのかもしれない。

話そう、と思った。
今晩、本当に真剣に澪と話そう。
事態が好転するとは限らないけれど、逃げたままでもいられないしな。
それに梓との約束もある。
放課後ティータイムの再結成……。
そのためには逃げたままの私じゃ駄目なんだ。
色々な事がいい加減な私ではあるけど、
皆とのセッションだけは真正面から真剣に向き合いたい。

そういう事を考えていたせいか、
私が真面目な顔になってたんだろうと思う。
ムギも苦笑をやめて真面目な表情になって、ある意味ムギらしい事を言った。


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