過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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170:にゃんこ[saga]
2012/02/27(月) 20:07:36.43 ID:gcrOS0dK0
何が起こってるんだ……?
これは私の願望が見せた夢なのか……?
どっちが現実で、どっちが夢なんだ……?

頭が混乱する。
分かってた事のはずなのに、身体中に震えを感じて、叫び出したくなる。
実際、心の中じゃ、絶叫してた気がする。
何が何だか分かんなくて、思い切り叫んでやりたかったんだ。

でも、実際にはそうしなかった。
何とか叫び出さずに踏み止まれたのは、腕の中の違和感に気付けたからだ。
当然、私の腕の中にはムギが居る。
いきなり飛びかかったにしては、何とか怪我もしてないみたいだ。
でも、今のムギの肌の感触は、
これまで何度か抱き着いた事があるムギの肌とは、全然違う感触だったんだ。

冷え切ってる、って思った。
夏なのに、炎天下のアスファルトの上なのに、
しかも、一家に一台欲しいって言われるくらい体温の高いムギなのに、
その肌と、多分、その心も冷え切っていた。
冷たいムギの肌の感触が、私の頭も冷静にしていく。

駄目だ……。
このままじゃ駄目だ……。
澪が怯えてたみたいに、ムギだって自分の置かれた状況に怯えてるんだ。
私だって恐いし、逃げ出したくなってる。
でも、逃げてちゃ、間違いなく、もっとひどい事になってしまう。
何とか……。
何とかしなきゃ……。


「ごめんね、りっちゃん……」


私の腕の中で、ムギがとても申し訳なさそうな表情を浮かべて呟いた。
泣き出しそうにも見えるくらいだった。


「聡くんの自転車、傷付けちゃったね……。
ごめん……、ごめんね……。
私が聡くんの自転車に乗りたいなんて、我儘言っちゃったから……」


「そんな事……っ!」


思わず大声になっていた。
そんな事、ムギが気にする事じゃない。
自転車を倒したのは私だし、傷付いたって言っても見る限りはほんの少しだ。
聡だってそんな程度の傷じゃ怒らないだろうし、
もしも怒ってしまったら、私がバイトでも何でもして新品を買ってやる。
大体、そもそもの原因は、こんな異常な状況に何も出来ないのが悔しくて、
車道の真ん中を走ってやろうってなけなしの反抗を思い付いた私にあるんだ。
ムギが気に病む必要なんて何処にも無いんだ。


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