過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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171:にゃんこ[saga]
2012/02/27(月) 20:08:12.25 ID:gcrOS0dK0
だから、言った。
辛そうな表情のムギの両肩を掴んで、真正面から瞳を覗き込みながら伝えた。


「いいんだよ、ムギ。
自転車が傷付いた事なんて気にしなくてもいいんだ。
そんな事より、ムギが無事な事の方が何倍も大切なんだよ。

だから、そんなに自分を責めないでくれ。
そもそも最初に道路の真ん中を渡ってやろうなんて、
馬鹿な事を思い付いちゃった私が悪いんだから……。

だから、さ。
ムギが無事で、ムギがトラックに轢かれなくて、本当によかった。
私のせいでムギに怪我をさせる事にならなくて、本当によかったんだから……。
もうそんな事は気にしなくていいんだよ。
聡に怒られたら、ちゃんと私が謝るから、ムギは何の心配もしなくていいんだよ……」


もしも、本当にまた聡に会えたら、とは言わなかった。
今はそんな事を言う時じゃない。
今はムギをもっと安心させてやらなきゃいけない時なんだ。
こんなに冷え切っちゃてるムギの体温を、取り戻してやらなきゃいけない時なんだ。

だから、私はちょっと苦笑しながら言った。
わざとらしかったかもしれないけど、ムギには笑顔を向けたかった。


「それにさ、謝るのは私の方だよ、ムギ。
ムギが倒れちゃったのも、
自転車を倒しちゃったのも、私がムギに飛び掛かったからじゃんか。
大体、トラック何処かに消えちまったし……。
これじゃ私の早とちりって言われても仕方が無いよな。

だから、ムギはむしろ被害者なんだよ。
悲しそうな顔をする必要なんてないんだぜ?
そうだな……。
逆に怒ってさ、澪みたいに私の頭を叩いてくれていいんだ。

思い出してみたら、
私がムギを叩いた事はあったけど、
ムギが私を叩いた事なんて無かった気がするしな。
いいぞ、気の向くままに叩いてくれよ」


私の言葉にムギが戸惑った表情を見せる。
私を叩こうか迷ってるんだったら、全然嬉しい事だった。
いくらでも叩いてくれていい。
でも、残念ながら、ムギが戸惑った表情を浮かべた理由はそうじゃなかったらしい。
ムギが確かめるみたいに小さく呟いた言葉から、それは分かった。


「トラック……、少しだけ見えた町の人達……、猫、犬……。
あれは……、何だったの……?
りっちゃんも見えてたわけだから、夢……じゃないよね……?
勿論、錯覚や幻想でも……。
だったら、あれは……」


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