191:にゃんこ[saga]
2012/03/04(日) 14:46:18.27 ID:3MkZB8Lw0
「律先輩?」
梓が不安そうに私の顔を覗き込む。
私が何も言わなくなった事を不審に思ったんだろう。
首を傾げながら、梓が重々しく続ける。
「もしかして、本当にムギ先輩に何かしたんですか?
そういえば、律先輩、いつの間にか肘に怪我してるし、
ムギ先輩に何かしようとして突き飛ばされたとか……」
「おいおい、そんな……」
「そんな事無いよ、梓ちゃん」
私が自己弁護するより先に、そう言ってくれたのは憂ちゃんだった。
私を信用し切った顔で、笑ってくれている。
「律さんが紬さんにそんな事するはず無いよ。
だって、律さんは私達の軽音部を作ってくれた自慢の先輩なんだから。
お姉ちゃん達や私達の居場所を作ってくれた人なんだよ?
そんな律さんが紬さんに変な事するわけないよ」
まっすぐな瞳に見つめられ、私と梓は言葉を失ってしまう。
勿論、梓だって本気で私がムギに何かをしたとは思ってないはずだ。
ただ私が口ごもるのが不審だったから、カマを掛けてみただけなんだろうと思う。
でも、憂ちゃんに言われて、自分が失礼な事をしてしまったと気付いたらしい。
軽く私に頭を下げる。
「すみません、律先輩。
私ったら失礼な事を言ってしまったみたいで……」
「いいよ」と言って、私は梓の頭を撫でる。
別に怒ってるわけじゃないし、皆に秘密にしてる事があるのは私の方だ。
憂ちゃんに信頼してもらえるのは嬉しいけど、悪いのは私の方なんだ……。
それはとても辛かったけど、それをここに居る皆に伝えるわけにはいかなかった。
こんな状態で、皆にはっきりしない希望は持たせたくない。
それにしても、まさか憂ちゃんが真っ先に私を弁護してくれるとは思わなかった。
憂ちゃんはいつの間に私をこんなにも信頼してくれるようになったんだろう。
梓もそれは感じていたようで、私の耳元で軽く囁いた。
「律先輩……、憂と妙に仲が良くないですか……?
いえ、悪い事じゃないんですけど、
何だかいきなり急接近してるような気がして……」
その原因は私にも分からない。
ただ私も今日から急に憂ちゃんに親しみを持ててるような気がする。
朝に裸の付き合いをしたおかげなんだろうか?
何となく思い付いて、あの漫画の台詞を借りて言ってみる。
「それはひとえに湯の力ですよ、梓さん。
湯のある所に諍いは生じませんからね」
「何ですか、それ……。
確かに今朝、律先輩は憂とお風呂に入ってましたけど……」
「お、ローマのお風呂漫画の台詞じゃないですか。
律先輩も通ですね。
あっ、憂、もうちょっと下の方もお願い」
私達の会話が聞こえていたらしく、
マッサージされながら、純ちゃんが嬉しそうに言った。
純ちゃんも読んでたのか、あの風呂漫画……。
お兄さんが居るからかもしれないけど、
あのゲームのネタといい、純ちゃんも色々とマニアックだな……。
勿論、私に言えた事じゃないけどさ。
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