過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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24:にゃんこ[saga]
2012/01/20(金) 19:37:06.72 ID:RkUbXfly0





屋上の柵から、誰も居ない私達の町を見下ろす。
三日前から人も他の生き物も完全に消えてしまった私達の町。
静かな風と、風に靡く木々の音だけが響いてる。

一瞬、少しだけ強い風が吹いた。
心臓が大きく鼓動する。
物凄い不安を感じて、私は後ろを振り返った。
まだ屋上に居るはずのあいつの姿が、そこにあるか確かめたかったんだ。

振り返って見た屋上の中央付近、
さっきまでと変わらず、和が穏やかに微笑みながら首を傾げていた。
よかった……。
まだ和はこの世界に私と一緒に居る。

三日前、一陣の風と一緒に生き物がこの世界から消えて以来、
ちょっとでも強い風が吹く度に、私は自分の湧き上がる不安を抑えられなかった。
また風と一緒に誰かが……、
何かが消えてしまうんじゃないかと思えて仕方が無かったからだ。
この世界からまた何かが失われてしまうじゃないかって、
そう思えてしまって、それがすごく恐い。

いや、この世界……、と大袈裟に考えてみてはいるけど、
まだ私達はこの世界全体がどうなっているのか分からなかった。
あの日、一陣の風が吹いてから、テレビは映らないし、ラジオも流れてなかった。
インターネットにも当然繋がらなかったし、
どうにか自分達の目で確かめてみようとしても、
まともな交通機関無しじゃ、県外に出る事すら簡単に出来そうもない。

テレビやネットで世界の事はそれなりに知っているつもりだった。
結局、私達は他の物知りな誰かに教えてもらわなきゃ、
世界どころか県内の事すら、ほとんど何も知らないって事なんだろうな。
自分の身の程を思い知らされて、これまでの自分が滑稽に思えてしまう。


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