260:にゃんこ[saga]
2012/03/22(木) 14:05:08.79 ID:uTBomnnF0
◎
ほうかごガールズを組んでから、数日は何事も起こらなかった。
何事も起こらなかったって言うより、
何も進展しなかったって言う方が正しいかもしれない。
あれから何度かあの横断歩道にも行ってみたけど、
何があるわけでもなく、何が起こるわけでもなく、何の手掛かりも掴めなかった。
やっぱりあの時見た生き物の光景は、誰かの夢の中の記憶だったんだろうか。
まあ、こんな事態、進展させようもないっちゃないんだけど、何も出来ないのは悔しい。
だから、その分、私達は新ユニットの練習に励んでやる事にした。
幸いにもと言うべきか、食糧と時間はたくさんあるんだ。
閉ざされた世界に対して何も出来ない分、私達のために何かをしてやりたかった。
ほうかごガールズはほうかごガールズで何かをする。
澪達も澪達で何かをしているらしい。
それでいいんだと思った。
先の見えない世界でも、前に進む事だけはやめるわけにはいかない。
それだけは……、やめちゃいけないと思うから。
「それにしてもさ、和……」
吹奏楽部が使ってる方の音楽室、私はピアノの前に座る和に声を掛けた。
静かに微笑み、和が応じてくれる。
「どうしたのよ、律?」
「上達早いよなー、って思ってさ。
上達って言うか、昔取った杵柄って言うか……。
とにかく、凄いじゃんか。
もう安心して演奏を見てられるよ。
本当に長い間、ピアノ弾いてなかったのかよ?」
「そうかしら?
でも、長い間弾いてなかったのは本当よ。
中学に上がる頃には全然弾かなくなっていたから、かれこれ三年くらいになるかしら。
しかも、音楽の授業とお遊びで弾いてただけだから、本当に弾けるってレベルじゃないのよ。
まだうまく弾けない箇所も多いし……。
こんな出来で唯達に聴かせてもいいものなのかしら……?」
不安そうに和が目を伏せる。
初めてのライブを間近にして、流石の和でも不安を隠せなくなって来てるんだろう。
そりゃ初めてなんだもんな。
内輪だけのライブとは言え、緊張しちゃうのは仕方が無い。
私は微笑みを和に向けて、言葉を返してやる。
「何言ってんだよ、和。謙遜かー?
私なんか和の十分の一もピアノ弾けないし、
ドラムの演奏を人前に聴かせるレベルにするまで、すっげー時間が掛かったんだぜ?
それに比べりゃ、和のピアノの演奏は自慢してもいいレベルだよ」
「そうだよ、和ちゃん!
私、和ちゃんのピアノの演奏、凄いと思うよ!」
手を胸の前で握ってそう言ったのは唯……、じゃなくて憂ちゃんだった。
何か唯みたいな言葉と仕種だけど、別に私が二人を見間違えてるわけじゃないぞ。
全然違ってるように見えても、二人はやっぱり姉妹なんだなって思う。
しかも、その顔を紅潮させた様子を見る限り、
お世辞じゃなくて本気でそう思ってるみたいだ。
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