298:にゃんこ[saga]
2012/03/29(木) 19:06:44.80 ID:ijrP8wMy0
「そんな風に、私、お姉ちゃんが居なくなって寂しかったんですけど……、
純ちゃんや梓ちゃんが励ましてくれたおかげで、何とか元気になれたんです」
憂ちゃんが遠い目をしながら続ける。
梓や純ちゃんにしてもらった事を思い出してるんだろう。
その表情は優しく、嬉しそうだった。
「そっか……」
私は呟きながら頷く。
何にでも完璧に見える憂ちゃんにだって弱点はある。
失敗しちゃう事もあるし、悩んじゃう事だってあるんだ。
そういう所もある子なんだよな……。
憂ちゃんと同じバンドでセッションしながら、気付いた事がある。
憂ちゃんの演奏はほとんど完璧だ。
演奏歴が短いなんて思えないくらい、凄い速度で成長してるのが分かる。
合わせていて、安心も出来る。
でも、私にはちょっと物足りなかった。
憂ちゃんの演奏は完璧なんだけど、教科書通り過ぎた。
揺らぎが無い完璧で均一的な演奏なんだ。
勿論、それは欠点じゃない。
むしろ憂ちゃんの方がミュージシャンとしては正しいと思う。
だけど、長く唯と組んでた私にとっては、それが物足りない。
唯はよく失敗するし、難しいパートを弾けたと思ったら、簡単なパートで躓いたりもする。
唯とのセッションじゃ、一度として同じ演奏を出来た覚えが無いくらいだ。
でも、私にはそれがよかった。
唯の失敗は確かに多いけど、予想以上の大成功になっちゃう事も何度もあったからだ。
不思議な話なんだけど、唯とのセッションの方がワクワク出来るんだよな。
あいつは何をやってくれるか分からない面白さがある。
そこがあいつの魅力なんだ。
もしも私達の中の誰かがミュージシャンになれたとして、大成出来る可能性が一番あるのはあいつだろう。
あいつには揺らぎ……、可能性が沢山残されてる。
完成されてない魅力って言うのかな。
私がミュージシャンになれる可能性はほとんど無いと思う。
趣味としては続けるだろうし、
ライブとか音楽的な活動はするかもしれないけど、
商業的なレベルの世界で長く生き残るのは無理じゃないかな。
悔しいけれど、私にはそこまでの実力は無い。
いつかは皆揃ってライブする事も出来なくなるかもしれない。
でも……、唯には、羽ばたいてほしい。
あいつには才能があるし、私達の誰よりも音楽への愛がある。
あいつなら商業的にも成功出来るはずだ。
いつかはきっと、私達を置いて音楽の世界に羽ばたいていけるだろう。
その時まで、あいつの足を引っ張らなくないで済むように、私は精一杯あいつを支えたい。
結局、私は唯のギターが凄く好きなんだよな……。
憂ちゃんも私と同じような事を考えてるはずだ。
唯の事にしてもそうだし、私とのセッションの違和感に気付いてなくもないだろう。
菫ちゃんのドラムを聴いた事は無いけど、ドラムのセッティングを見る限り、かなり几帳面っぽい気がする。
きっと憂ちゃんの完璧な演奏に合わせた、正確なドラミングを刻んでるはずだ。
純ちゃんも生き残りの厳しいジャズ研で演奏してただけあって、意外にもその演奏は堅実だ。
そして、梓もアドリブより積み重ねた努力で魅せるタイプのギタリストなんだよな。
そう考えてみると、わかばガールズは技巧派集団ってやつか。
結構適当に活動してた放課後ティータイムの後を継ぐ者とは思えんな……。
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