過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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3:にゃんこ[saga]
2012/01/17(火) 18:38:41.67 ID:mvyE/vRa0
苦笑を崩さず、眼鏡を掛け直しながら和が続ける。

「昨日、書店で周辺地図を探してきてって頼んでたでしょ?
まあ、有り余るくらい食材を集めてきてくれたのは助かったけどね。
大方、律と一緒に行ってた唯が「地図よりごはんが大切だよ!」とか言い出したんでしょう?」

「大当たり。流石は唯の幼馴染みだな」

感心して、軽く拍手する。
和の御推察通り、昨日、私は唯の提案でありったけの食材を集めていた。
それで調理は私と澪でやって、豪勢な食事を皆に振る舞ったんだ。
こんな状況だ。
食事くらいは豪勢にやってやらないと、気が滅入るじゃないか。
和もそれを分かってくれていたのか、昨日は書類……地図については私達に訊ねなかった。
きっと食事で盛り上がる皆に水を差したくなかったんだろうな。
それで今日になって落ち着いてから、私に頼んでおいた地図の件を訊ねる事にしたんだろう。
私は自分の迂闊を恥ずかしく思いながら、今度は大きく和に頭を下げた。

「でも、ごめんな、和。
皆に美味しいごはんくらいは食べさせたいと思った瞬間にさ、
和に頼まれてた事を全部忘れちゃってたみたいだ。
和も和で大切な仕事をやってくれてるのに、
私なんか自分の事ばかり考えてみたいで申し訳ないよ」

「いいわよ。焦る事でもないし、律のごはんも美味しかったしね」

私の謝罪に和は笑顔で応じてくれた。
久し振りに会ったせいかもしれないけど、何だか高校時代よりもずっと大人っぽく見える。
きっと大学でも持ち前のリーダーシップを生かして、皆を引っ張っているんだろう。
ほとんど何も変わってない私達とはえらい違いだよな。

不意に和が、笑顔から真剣な様子の真顔に表情を変える。
笑顔になるべき場所と、真顔になるべき場所を弁えてるって事だ。
私も和に褒められて笑顔になりそうだった自分の表情を引き締めた。
私の表情を確認すると、和が重い口振りで話し始める。


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