過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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318:にゃんこ[saga]
2012/03/31(土) 18:03:55.97 ID:dC3rBIds0
途端、息を呑んだ。
紙には見覚えのある絵と癖のある文字が書かれていた。
『おまえのうしろに真っ白いイルカの親子が』という文字と。
我ながら下手糞なイルカの絵。
我ながら、だ。
そう、それは間違いなく、私がずっと前に唯に回した手紙だった。

こんな事があるか、と思った。
この机を使ってるのはもう別の生徒のはずだし、
大体、私が唯に回した手紙はムギが全部家に持って帰ってる。
じゃあ、これはどういう事だ?
誰かが私と全く同じ手紙を書いたってか?
そんなのあるかよ、どんな偶然だよ、それは。
だったら、ムギがわざわざ自宅から手紙を持って来て、
何の意味も無く唯の机に私の手紙を入れたってのかよ?
それだって有り得るもんか。

考えられる可能性はただ一つだけ。
やっぱりこの世界は誰かの夢の中だって事だ。
夢の中ってだけなら、澪や和と何度も話し合った事だし、別に驚く事じゃない。
驚くべき点は一つ。
中途半端なくせに、この夢の世界が私達の事に妙に詳しいって事だ。
そうでなきゃ、こんな私の書いた手紙なんて再現出来るもんか。
つまり、それは、やっぱり……。

そうだ。
考えてないわけじゃなかった。
一番不自然だと思ってたのは、何でこの世界に迷い込んだのが私達なのかって事だ。
他の誰でもいいじゃないか。
それこそ私達だけじゃなく、
菫ちゃんやさわちゃんや信代やいちご……、
そんな私達の知り合いの誰かが居たっておかしくなかった。

でも、この世界には選ばれたみたいに私達八人しか居ない。
選ばれたみたいに、じゃない。
誰かに選ばれたんだ。
いや、誰かに、でもない。
私達八人の中の誰かに選ばれたんだ。

そりゃそうだ。
これだけ所々中途半端に、
でも、妙な所だけ詳しい世界を造り上げるなんて、私達以外の誰かに出来るわけがない。
この閉ざされた世界は私達の中の誰かの心の中の世界なんだ、きっと。
原因は分からない。理由も分からない。
でも、多分、そうなんだろうなって思う。
謎が解決した昂揚感は沸いて来なかった。
分かって、どうなる?
分かって、どうするんだ?
この夢を見てる誰かを探り出して、問い詰めるか?
そんな事したって、現状がどうにかなるとは思えない。


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