338:にゃんこ[saga]
2012/04/20(金) 17:51:00.04 ID:CZrAexFF0
「でも……?」
「探すのは前に泊まったホテルまでの道中だけだ。
見た感じ、この近辺に三人は居ないみたいだ。
だったら何処に居るかはともかく、こことは違う遠い場所に居るんだろうな。
幸い……って言うのも変だけど、ここからホテルまでは結構な距離があるよな?
その道中、三人をじっくり探しながら進むんだよ。
ホテルに到着しちゃったら、今日の捜索はおしまい。
それなら……どうだ?」
いい案だな、と私は思った。
それなら私の考えと唯の想い、両方を尊重出来る。
こんな状態で澪は冷静だよな……。
冷静な判断が出来てる。
いや……、違うか。
澪の肩は私達と同じく少し震えてるみたいだった。
震えてるけど、怖いけど、勇気を出してるんだ。
大体、五人で取り残される前から、澪はずっと怯えて追い込まれてたんだ。
自宅の部屋にしばらく閉じこもるくらい、逃げ回ってたんだ。
逃げ回って、追い込まれてたからこそ、今一番強く振る舞えてるんだろう。
すぐに追い込まれるけど、追い込まれてからが強い。
それが澪の強さで魅力なんだろうな……。
私の方は……、駄目だな……。
普段強がってても、逆境やアクシデントにはてんで弱い。
予想外の事が起こっちゃうと、全然動きだせなくなっちゃうんだよな……。
何やってんだよ、いざという時に役に立たない部長の私……。
「私は……、それでいいと思うよ……。
りっちゃんも……、それでいい……?」
唯が不安そうな視線を私に向けて訊ねる。
自分が我儘を言ってたのを自覚してただけに、
その我儘が少しでも通りそうになった事が逆に不安に思えて来たんだろう。
だけど、我儘を言ってるのは私も同じだった。
二人とも、大切な物が別々だっただけなんだ。
唯は過去を選択して。
私は未来を選択して。
澪が現在を選択してくれて。
多分、そういう事なんだ……。
私は申し訳ない気分になりながら、どうにか絞り出すように言った。
「ああ……、それくらいなら……、私もいいと思う……。
私だって……、憂ちゃん達の事は気にな……」
それ以上は言えなかった。
憂ちゃん達の事が気になってるのは本当だ。
絶対に嘘じゃない。
でも、憂ちゃん達より、残された皆を選んだのも本当で……。
憂ちゃんと純ちゃんと和を切り捨てたのも本当で……。
そんな私が憂ちゃん達を気に掛けてるなんて、言っちゃいけないと思ったんだ。
「ムギも……、それでいいか……?」
澪が涙の止まらないムギに訊ねる。
ムギは涙こそ止まらなかったけど、澪の言葉に頷いた。
ムギだってこのままじゃいけないんだって事は分かってるんだろう。
ただどうしたらいいのか分からないだけで。
「じゃあ……、早速行こう、皆。
場所が関係してるのかは分からないけど、
ずっとここに居るのは、また何処かに飛ばされちゃいそうでちょっと不安だしな……」
澪が表情を歪めながら呟く。
確かにそうだ。
飛ばされるかどうはともかく、忌まわしい出来事が起こった場所には違いない。
今の所は出来る限り早く離れたい気分が私にもある。
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