過去ログ - 律「閉ざされた世界」
1- 20
362:にゃんこ[saga]
2012/04/29(日) 18:44:16.84 ID:T2Olr24x0
私は一つ深呼吸する。
梓は強くなった。私のおかげではないだろうけど、頼り甲斐のある部長に成長した。
そんな梓なら、きっと私の選択も正しく判断してくれるだろう。
元部長が年下の現部長に頼るなんて情けない気もするけど、
今は素直に梓の成長を喜んで、梓の言葉を聞かせてもらおう。
今の梓になら、私の選んだ道を責められたって構わない。

私は意を決して、口を開く。
自分の選択肢の是非を確かめるために。
でも、その話題に入るより先に、まずはこれだけは訊ねておこうと思う。


「午前中……さ。
唯の様子はどうだった?
無理……はしてるだろうけど、必死になり過ぎてなかったか?
皆のために一生懸命になり過ぎるのはあいつのいい所だけどさ、
でも、ずっとそんな調子じゃ、あっという間に疲れちゃうよ。
ただでさえ、あいつってあんまり丈夫な方じゃないんだし……」


そう。まずは唯の話だ。
私の選択の事より、まずは唯の話が聞いておきたい。
唯は私と逆の選択肢を選んだ。
未来じゃなくて、過去を選んだ。
選んだ道が違うから気まずくて視線も合わせられないけど、気になるんだ。
それも私の選びたかった道だから。
私の切り捨てた道だから。
それを選ぶ事が出来た唯の今を深く知っておきたかった。

私の言葉を聞くと、梓はまっすぐな視線を崩さなかったけど、何故だか口元だけ嬉しそうに歪めた。
微笑んでるのか……?
何で……?
私、変な事言ったか……?

そうやって戸惑う私の姿が面白かったのかどうかは分かんないけど、
梓は左手で私の右腕を掴んで自分の身体と私の身体を向かい合わせにして、また上目遣いになった。
いや、面白くて笑ってるって感じじゃないか。
嬉しくて微笑んでる感じか?
それはそれとして。
こんなに近い距離で向かい合って見つめ合うなんて、澪ともそんなにやった事が無いから緊張する。
何だかキスする前の体勢みたいで恥ずかしいな……。
って、何考えてるんだ、私は。
私は恥ずかしさでつい逸らしそうになった視線を梓の瞳に戻し、梓の次の言葉をじっと待った。

どれくらい経ったんだろう。
何度目かの深呼吸に似た呼吸を終わらせた頃、不意に梓が口を開いて声を出した。
柔らかく、優しい声だった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
657Res/1034.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice