383:にゃんこ[saga]
2012/05/04(金) 18:39:56.15 ID:t2x5TMSU0
「唯……ちゃん……?」
ムギの静かな声が響く。
その声色からは、ムギの感情は読み取れない。
私の方はと言えば、振り返ってムギの表情をうかがう事も出来ない。
ムギが唯の姿をどう思ってるのかを知るのが怖い……。
私は視線を伏せる。
出来る事なら耳を手のひらで塞ぎたい気分だった。
ムギの反応を……、知りたくない……。
「おっ、ムギちゃんもおかえりー。お疲れ様ー」
唯の明るい声が上がる。
その声に対してムギは……、ムギは……。
言った。
想像以上に明るい声で言ったんだ。
「わあっ、どうしたの、唯ちゃん?
その眼鏡、すっごく似合ってる!
あっ、ひょっとしてその眼鏡とその髪型って……」
それ以上の言葉を聞いて、正気で居られる自信が無かった。
気が付くと、私は自分でも驚くくらいの大声を上げていた。
わざとらしかったけど、わざとらしくても、そうするしかなかった。
「あーっ! しまったあっ!」
「ど……、どうしたの、りっちゃん……?」
唯が不安そうな声色で私に訊ねる。
その唯の表情を見る事は私には出来ない。
したくない。
これ以上、ここには居られない。
未来に進むためには、ここに居ちゃいけない……!
私はもう一度、誰の顔も見ないようにして、
背負ってたリュックサックを部屋に投げ入れてから大声で叫んだ。
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