439:にゃんこ[saga]
2012/05/16(水) 18:33:20.82 ID:WgkY/9oG0
私がそれを伝えるより先に、唯がもう一度言った。
唯が言う必要ない言葉を、また言ったんだ。
「ごめん……ね……」
「どうして……、どうして謝るんだよ、唯……」
「だってだって……、りっちゃんが捨てた物なのに、
りっちゃんが……ちゃんと考えて捨てた物なのに、私が拾っちゃって……ごめん……。
でも……、でもね……、りっちゃんには……、捨ててほしくなかったんだ……。
私の我儘だけど……、りっちゃんに思い出を大切にしてほしかった……から……。
我儘な事言って……、ごめん……ね……」
思わず息を呑んだ。
ああ……、何だよ……、何て事だよ……。
唯は思い出を大切にする。私は未来に進む。
二人のその想いは違ってるようで同じだったって事に、何で私は気付かなかったんだ。
私は未来を、皆の未来を守りたかった。
同じ様に唯は思い出を……、自分だけじゃなくて、皆の思い出を守りたかったんだ……。
過去を捨てようとした私の思い出まで……。
馬鹿だ。唯は本当に馬鹿だ。
私なんかのためにこんなに満身創痍の状態にまでなって……。
死にかけてるんだぞ、おまえ……。
私は捨てようとしてたのに……。
過去と思い出を捨てようと思ってたのに……。
何て……、何て馬鹿な奴なんだ……。
そして……、それに気付けなかった私が一番馬鹿だ……!
「ごめん……。ごめん……ね……」
また唯が謝る。
辛そうに、苦しそうに、悲しそうに謝る。
もうやめてくれ、唯。
おまえは謝らなくていい。もう謝らなくていい。
むしろ責めてくれ。
こんな結局自分の事しか考えられなかった私を、
思い出を捨てる事で唯達も捨てる事になりそうだった私を責めてくれよ……!
「もういいよ、唯……。
謝るなよ、もう……、謝らないでくれよ……。
ピックの事は私も怒ってない……。だから……」
私が言うと唯が苦しそうに首を振った。
ピックの事以外に謝りたい事がある……。
そんな素振りに見えた。
「ううん、私……、謝らなきゃ……。
皆に謝らなきゃ……、いけないんだ……。
だって……、私ね……、気付いちゃったんだ……。
ずっとベッドに寝ててね……、皆に看病されてて……、
何だか思い出して来たんだ……。
私……、確か……、風邪になる前から、皆にずっと……」
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