456:にゃんこ[saga]
2012/05/20(日) 17:41:51.01 ID:Q/gkUNmc0
そこまで考えて、不意に私は思い付いた。
現実離れした考えだったけど、今更現実離れしてたって誰も気にしないだろう。
この世界は誰かの夢の中の世界で、多分、それは唯の夢のはずだ。
世界は夢だ。
でも、ここに居て、物を考えてる私達はどうなんだろう?
少なくとも、私は私や唯、ムギ達が唯の夢の産物とは思えない。
私達は確かに生きてる。生きて、考えてる。
他の物が全部夢だとしても、私達の心だけは本当の物のはずだ。
心だけは本当なんだ。
本当だから、苦しんでるんだ。
だけど……、ひょっとしたら……。
そう思った瞬間、辛そうな表情の梓の顔が視界に入った。
真っ黒に日焼けした梓の顔……。
気が付けば私はその梓の頬に手を伸ばして触れていた。
「律先輩……?
な……、何なんですか、こんな時に……」
梓が複雑そうな表情をしながら呟いて、
それど私は自分のやってしまった事に気付いて「悪い」と素直に謝った。
だけど、正直、私の頭の中はそれどころじゃなかった。
そうだ……。
私達の心は本物だ。確証は無いけど、そうだって思える。
でも、私達の身体はどうだ?
この世界の構成物質が夢だとしたら、
私達の身体の抗生物質も夢だとしても全然おかしくない。
私達の身体が誰かの夢だって証拠の一つが梓の日焼けだ。
日本の夏よりもずっと涼しいロンドンに転移させられて一週間も経つのに、梓の日焼けは全然治ってない。
すぐ真っ白に戻る新陳代謝のくせに、今回だけ梓の日焼けは治らない。
それこそ、梓の身体も誰かの夢で構成されてるって証拠じゃないだろうか。
それを伝えていいものなのかどうかは迷った。
そもそもこの世界が誰かの夢だとは確定してない。
唯の夢だなんて、確定したわけじゃない。
それに唯は私だけにその話をしたんだ。
約束をしたわけじゃないけと、私と唯だけの内緒の話にしてほしかったんだろうと思う。
もしかすると、自分が死んだ時に誰も悲しませないために。
元の世界に戻った澪達が、唯が死んだおかげで元の世界に戻れたって事に気付いて傷付かないために。
唯の気持ちは痛いほど分かる。
私だって、唯と同じ状況ならそうしてたかもしれない。
だけど、思った。
今の唯と私の状況が逆だったなら、唯はきっとこうするだろうと思った。
もしもこの世界が私の夢で、私が唯だけにそれを打ち明けていたなら、こうしたはずなんだ。
心の何処かでこうしてほしかったはずなんだ。
だから、私は皆に全てを打ち明ける事にしたんだ。
後で唯にどれだけ怒られたって構わない。
これも私と唯の選びたかった選択肢なんだろうから。
「なあ、皆、聞いてくれるか?
突然だけど、この世界の事についてなんだ。
唯の体調にも関係してくる話だから、落ち着いて聞いてほしい。
唯と話し合ってて思い出した事があるんだ。実は……」
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