480:にゃんこ[saga]
2012/05/27(日) 18:32:26.42 ID:Don8XXFs0
「まさか……」
思わず呟いてしまう。
まさか私はまた間違ってしまったってのか?
時間が無いっていうのに、唯が苦しんでるっていうのに、
自分の迷いと戦う事に精一杯で、肝心な事に目が行ってなかったってのか?
風でピックが飛ばされてるかもって、そんな簡単な想像も出来ず……。
三日間も唯が必死に捜してくれた物を、
投げた方向が分かってるってだけで、簡単に見つけられるって勘違いして……。
馬鹿か、私は!
いや、正真正銘の馬鹿だ!
何で私はこんなに……。
こんなに馬鹿ばっかりやっちゃってるんだよ……。
いや、後悔してる時間は無い。
後悔してたって、何も出来ない。
風で飛ばされたってんなら、範囲を広げて捜すだけだ。
何としてでも捜し出すだけだ。
私に出来るのはそれだけなんだから……。
もうそれしか出来ないんだから……。
だから、急いで他の場所を捜しに……。
不意に。
私は思い付いた。
思い付いてしまった。
それは私の焦りが産み出した悪魔の囁きだったのかもしれない。
だけど、悪魔の囁きでも、それは私自身が産み出した悪魔には違いなかった。
時計屋から拝借してきた腕時計で時間を確認してみる。
時間はもうすぐ七時を回ろうとしている。
あっという間に二時間も過ぎ去ってしまった。
もうすぐ陽も落ちてしまうだろう。
ピックが落ちている場所の推測が全然出来てない上に、陽まで落ちてしまったら本当に打つ手が無い。
ライト付きのヘルメットは被ってるけど、
こんな小さなライトくらいが何の役に立つのかも分かったもんじゃない。
だから、私は思った。
思ってしまった。
今から楽器屋に行って適当なピックを見つけて、
それにほうかごガールズのマークを描いてしまうってのはどうだろうって。
そのピックを本物として通すのはどうだろうって……、思ってしまった……。
ピックの事は私と唯しか知らない。
そして、本物のピックの形は私しか知らない。
本物のピックだって言って渡してしまえば、唯は単純に信じてくれるだろう。
心を落ち着かせてくれて、元気になってくれるだろう。
そうだ……。
今は一刻も争う時なんだ……。
さっき私は自分に嘘を吐く事を決めたじゃないか。
唯のために、皆のために、嘘を吐くって決めたじゃないか。
単に私がこれからずっとこの嘘を胸に抱えて、生きていけばいいだけだ。
唯に生きてもらうためなんだ。
唯に元気になってもらうためなんだ。
皆のためなら、私は嘘吐きにだってなってみせ……。
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