過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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491:にゃんこ[saga]
2012/06/01(金) 18:39:13.34 ID:rzsgqDp00
いや……、これまで捜しもしなかった場所だからこそ、か。
思いもよらない場所だからこそ、それに気付けばすぐに見つけられるんだ。
まさしく灯台下暗しってやつだ。
そうか……。
ちょっと考え方を変えるだけで、答えは簡単に見つけられるんだな……。
そう……だったんだな……。

私は思わず泣き出しそうになってしまう。
悲しいのか嬉しいのか分かんないけど、何故だかとても泣いてしまいたい。
でも、そんなわけにもいかなかった。
私は鼓動が激しくなる心臓を抑えながら、ホテルの入口に向かう。
今はピックを回収して、唯に見せてやる方が先だ。
唯に何を言えばいいのかは分からない。
何を言ってやれるのかは分からない。
でも、とにかくピックだけは回収しておかないとな……。

と。
ピックを見つけられた事で少し安心出来たせいか、
私に不意に今まで気にしないようにしていた感覚が頭に戻って来た。
痛みだ。
ズキズキと痛む私の頭頂部の痛み。
さっき壁に頭をぶつけた時の痛みじゃない。
あれも痛かったけど、ヘルメットを被ってたおかげで大した負傷にはなってなかった。
それ以外の頭の痛みと言えば、考えるまでもない。
澪に殴られた痛みだ。
さっきまで忘れてたけど、気にし始めるとかなりズキズキと痛い。
澪の奴……、相当本気で殴りやがったんだな……。

でも、私はそれが嬉しかった。
変な話だけど、澪が傍に居てくれてるってそんな気がしたからだ。
私が弱気に傾こうとした時、こうして喝を入れてくれるんだ、澪は。
今は傍に居なくたって……。
弱気になってなんて、居られないよな……。


「よっしゃあっ!」


私はそう言って自分に気合いを入れ、入口の庇に視線を向ける。
少し高い場所ではあるけど、脚立があれば簡単に届くくらいの高さだ。
脚立なら確かホテルのフロントに置いていたはずだ。
梓がホームセンターから念のため持って来てた物だけど、こんな時に役に立つなんてな。
梓の先見の明ってやつには感謝しないといけない。
あいつには助けられて、支えられてばっかりだ。
律先輩、律先輩って、呆れた顔をしながらも、あいつは私を支えてくれた。
呼ばれ過ぎて、傍に居なくたって鮮明にあいつの声を思い出せるくらいだ。


「律先輩!」


ほら、今だってあいつの声が……。
……って、違う。
今のは現実に耳に届いた声だ。
私は驚きながら声がした方向……、ホテルの内部に視線を向ける。
居た。梓だ。小さな身体で私達を支えてくれてる梓だ。
その梓がツインテールを振り乱して、息を切らしながら私に駆け寄って来ていた。
私の目の前にまで辿り着くと、梓は大きな声を張り上げた。


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