497:にゃんこ[saga]
2012/06/01(金) 18:52:01.87 ID:rzsgqDp00
私は口を開いて、次の想いを伝えようとしたけど、
その言葉は唯に先に言葉を言われる事で遮られてしまった。
これ以上唯に無理はさせたくなかったけど……、
でも、唯にも自分の想いを言葉にさせてやらなきゃ、私の一方的な押し付けになるとも思った。
私が私の想いを伝えたいように、唯だって唯の想いを私達に届けたいに違いないんだから。
「でもね……、りっ……ちゃん……。
私ね……、思うんだ……。思い出したんだ……よ?
元の世界での……、私の事……。
私……、ずっと眠っててね……、身体が……、動かせなくて……、
でもね……、憂や和ちゃんや……、
りっちゃん達が私を心配してくれてるのだけは……分かって……、
皆に心配掛けたくないな、泣いてて……ほしくないなって……、私……、思って……。
私が思っちゃっ……たから……。
だから……、皆が私の夢の……中に……」
ああ……、きっと、そうだろう。
そうなんだろうって思う。
完全に思い出せたわけじゃないけど、私もかなり思い出せてはきていた。
あの夏休みの日、一陣の風のせいで生き物が消え去ったわけじゃない。
ライブの帰り道、私達は何かの原因で大怪我を負った。
交通事故なんだか、通り魔なんだか、隕石なんだか、その原因は憶えてないしどうでもいい。
とにかく、私達は大怪我を負ったんだ。
特に唯が頭にとても大きな怪我を……。
その日以来、唯は目覚めなくなった。
目覚めなくて、悲しくて、
もう一度唯と話をしたいって、多分、私達全員がそう思ってた。
それがどういう理屈か叶ったんだ。
唯の夢の世界に私達の意識が迷い込むって形で、叶ってしまったんだ。
生き物が消えた理由は一陣の風のせいなんだっていう、
理に適ってるんだか適ってないんだかよく分からない設定で合理性が取られた唯の夢の世界に……。
でも、それなら、唯に責任は無いじゃないか。
この世界が生まれたのは唯がきっかけだったのは間違いないだろうけど、
それを望んだのは他の誰でもない私達自身だったって事になるじゃないか。
唯の傍に居たいと願った私達の想いが起こしてしまった出来の悪い奇蹟だったんだよ、これは。
漫画やドラマなんかでよく見るみたいな、ありきたりな奇蹟なんだ……。
私はそれを唯に伝えた。
唯に責任は無いんだって。
完全に思い出せたわけじゃないけど、私達は私達の意志でこの世界に来たはずなんだって。
でも、唯はやっぱり首を横に振った。
とても悲しそうに……、
体調の悪さよりも、心の問題こそが辛そうに……。
「あり……がとね……、りっちゃん……。
でも……ね……、私……、
もうりっちゃん達に……、辛い思いをしてほしくないんだ……。
私ね……。
憂達が居なくなっちゃった時……、凄く辛かった……。
怖かったし、辛かった……し、悲しかったんだよ……?
だから……ね……?
せめて、二人が傍に居るって思いたくて……、
髪型を憂みたいにして、眼鏡も掛けてみたんだよ……?
最初はそれで……安心……出来たんだ……。
でも……、後で気付いたんだ……。
りっちゃんの姿を屋上で見つけて、気付いたんだ……よね……。
私……、ひどい事しちゃったんだって……。
りっちゃんに辛い事を思い出させちゃった……って。
私が……、憂達の思い出に甘えちゃったから……、だから……。
もう誰にも私のせいで悲しい想いをしてほしくないんだよう……!」
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