499:にゃんこ[saga]
2012/06/01(金) 18:53:33.68 ID:rzsgqDp00
「でも、私が生きてたら……、皆、元の世界に……戻れないんだよ?
それに元の世界の私は……、
きっと……、もう目を覚ませられないと思うんだ……。
ここに居る私こそ……、本当の意味で……夢みたいな物なんだよ……。
皆を悲しませて、これからも不安にさせちゃう……迷惑な子なんだよ……?
それでも……いいの……?」
「いいに決まってるだろ!」
「唯ちゃんが死んじゃう方がやだ!」
言ったのは澪とムギだ。
ずっと見守ってくれていた二人だけど、
今ばかりは自分の気持ちを唯に伝えたいみたいだった。
伝えるべきなんだと思った。
嘘を吐いてたって、誤魔化してたって、物事は前に進まない。
それを教えてくれたのは唯じゃないか。
過去を捨てないでほしいって気持ちでピックを集めてくれたのは唯じゃないか。
今度は私達が唯にそれを教える番なんだ……!
私はポケットの中に入れていた三つのピックを取り出し、
誰にも見られないように、唯に握らせる。やっと見つけ出せたピック。
唯が大切にしようとしてくれた私の……、私達のバンドのピックだ。
「あっ、これ……」
唯が戸惑った表情で呟く。
まさか自分があれだけ捜して見つけられなかった物を、私が見つけてるとは思わなかったんだろう。
それとも、私がピックを捜しに行くとは思ってなかったのか……。
まあ、どっちでもいい。
とにかく、私は唯に自分の正直な気持ちを伝えるんだ。
「ありがとう、唯。
おまえのおかげで私はこれを捜せた。捜そうって思えた。
自分の思い出を捨てちゃ駄目だって思えたんだ。
もう大丈夫だよ、唯。
私は過去と向き合え……」
言っていて、違和感に気付いた。
違う。これは単なる唯に対する気休めだ。
強がってるだけの、大嘘だ。
そうじゃない。そうじゃないだろ、私。
私はもう皆に嘘を吐かないって決めたんじゃないか。
高鳴る鼓動を抑えて、私は本当の自分を曝け出す。
見せたくなかった自分を、やっとの事で皆に見せる気になれたんだ。
自分でも震えてる事に気付きながら、伝える。それでも。
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