503:にゃんこ[saga]
2012/06/03(日) 17:34:57.37 ID:w9A0afgF0
◎
雲が流れる。
何処までも果てしない空に、輝く雲が。
窓の外で静かに流れていく。
これまでの喧騒が嘘みたいな静けさ。
あいつが私達の心をこんなに占めてたなんて、思ってなかった。
あいつがこんなにも大事だったなんて、思ってもみなかったんだ。
失ってしまって、それをまた確認する。
私は横たわっていた主の居なくなったベッドに視線を向ける。
確かにあいつはここに居た。
ここで孤独や恐怖と戦っていた。
私達の事を思って、私達の傍で、生きてくれていたんだ。
でも、あいつは……、もう……。
「いい奴……だったんだけどな……」
「うん……」
私が呟くと、応じるみたいにムギが悲壮な表情で頷いた。
いい奴だったと思う、本当に。
失いたくなかった。
どんな形でも生きててほしかった。
守りたかった。
だけど、それは叶わなかった。
無力感が心を支配し、私は肩を落として拳を握った。
もうあいつに会えないんだと考えるだけで、自分の胸に大きな穴が出来てしまったかのように感じる。
その穴が塞がる日はいつか来るんだろうか……?
「この世界は……、これからどうなるんだろうな……」
澪が唯の横たわっていたベッドを整えながら、独り言みたいに呟いた。
独り言だったのかもしれないけど、私はその独り言に応じてやる事にした。
独り言にだって、返事が欲しい時もあるだろう。
「さあな……。
これからどうなるんだろうな、この世界……。
まだ分かんないよな、その辺もさ。
この世界が本当に唯の夢の世界だったのか、それも確定してないしな……。
でも、多分、世界は変わる。変わると思うよ。
いい方向になのか悪い方向になのかは分かんないけど、きっと世界は変わると思う」
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