505:にゃんこ[saga]
2012/06/03(日) 17:36:17.56 ID:w9A0afgF0
「ごめんよ、りっちゃんー!
心配掛けてごめんよ、りっちゃんー!
だから、そういう扱いはやめておくれよー……!」
しがみ付いて来たのは唯だった。
ついさっきまで寝てたくせに、その力は妙に強い。
それにしても、起きたばっかりのせいか、相変わらず寝癖を立たせまくった髪型だな……。
私はその寝癖っ子に向けて、わざと冷たい言葉を掛けてやる。
「あ、死んだふりをしてた平沢唯さんだ」
「死んだふりじゃないよー……!
あの時は本当に疲れてたんだよー……!
疲れて寝ちゃってただけなんだよー……!
ごめんよー、許してー……!」
唯が私の顔に自分の顔を近付けて何度も謝り出す。
暑苦しい……。
けど、その暑苦しさは嫌じゃなかった。
またこうして唯の体温を感じられるのは、私としても凄く嬉しかった。
泣き出してしまいたいくらい、息が詰まるくらい、嬉しい。
でも、それを唯に悟られるのも恥ずかしかった。
私は照れ隠しに唯の寝癖をくしゃくしゃに撫でながら言ってやる。
「許すも許さないもないよ、唯。
おまえが生きてくれてて本当によかった。
だけど、もう紛らわしい真似はもうすんなよ?
今度やったら、そうだな……、ムギ! 言ってやれ!」
「今度やったら、おやつ抜きだからね、唯ちゃん!」
「ええぅ?
わざとじゃないのにぃ……。
おやつ抜きは許してよ、ムギちゃんー……!」
唯が慌てた様子でムギに頭を下げ、その様子を見てムギが微笑んだ。
周囲で見てた澪や梓も苦笑してるみたいだった。
釣られて、私もちょっとだけ苦笑した。
あの時……、唯の身体中から力が抜けた時、私達は本気で動揺した。
唯を失ってしまったのかと思って、絶叫してしまいそうだった。
それくらい、胸が痛かった。
だけど、すぐに唯から寝息が聞こえてきて、
喜んでいいのか、怒っていいのか分からないけど、とにかく心の底から安心出来た。
唯まで失う事にならなくて、本当によかった……。
それだけは私達の共通の想いのはずだ。
「疲れも溜まってたみたいだし、安心して力尽きちゃったんじゃないかな」とはムギの言葉だ。
確かにずっと熱に苦しんでたわけだし、私達の言葉に安心して体力が尽きる事もあるとは思う。
思うけど……、何て紛らわしい奴なんだ……。
大体、突然電池が切れるとか小学生かよ……。
いや……、前々から死んだふりの演技ばかりしてる奴だったけど、
こんな時に無意識の内に死んだふりが出来るようになるなんて、その成長を褒めてやるべきか?
褒めてやるのも何だか悔しいが。
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