過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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509:にゃんこ[saga]
2012/06/03(日) 17:40:38.97 ID:w9A0afgF0
私達は音楽が好きだ。
音楽を皆で演奏するのが大好きだ。
ただただ純粋に、音を楽しんでいるのが好きだったんだ。
でも、あの時のライブは違った。
音を楽しむんじゃなくて、自分達の不安を紛らわせるためのライブだったんだ。
今ならそれが私にも分かる。
だから、あの日、ライブを開催出来てたとしても、
心の中にしこりのような物が残ってたんじゃないかな……。
もう、そんな演奏はしたくない。
そんな偽物じゃなくて、私達が大好きな本物の音楽を演奏したいって思う。
今度こそ、心から音楽を楽しんで……。


「りっちゃん」


急にムギが私に視線を向けて言った。
私はちょっと動揺しながら訊ねてみる。


「どうした、ムギ?」


「約束……、憶えてる?
ワンマンライブ……、今度こそ、やろうね」


「……ああ、憶えてるよ、ムギ」


「本当?」


「うん」


忘れっぽい私には珍しく、それは本当だった。
ずっと前、ムギと自転車で遠出した時にムギとした約束。
私とムギのワンマンライブの約束……。
あの約束は自分達の不安を振り払うための気休めみたいなものだった。
でも、今こそ本当に音を楽しむ意味で演奏したいなって思う。
色々あって延期に延期を重ねた分、最高のライブを見せてやるんだ。


「私だって!」


梓が私達の会話に入って来る。
自分だって負けたくないって意志が感じられる表情だった。
梓だって、ずっと我慢してたんだよな……。


「私だってライブをしたいです!
皆さんとまたライブをしたいんです!
私達のバンドのライブもまだでしたし……、皆さんに私達の曲を聴いてもらいたいです!
だから……、だから、唯先輩……。
もう絶対……、死ぬなんて言わないで下さい……!
私、唯先輩と一緒に居たいです……! 皆で一緒に居ましょうよ……!」


軽く叫んでから、梓が唯の胸に飛び込んだ。
梓のその小さな肩は小刻みに震えていた。
ずっと言い出せなかった本音を言うために勇気を出したんだろう。
普段の梓の姿からは想像出来ない意外な行動だった。
梓も素直になりたいんだ。


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