過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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548:にゃんこ[saga]
2012/06/12(火) 18:46:16.03 ID:CIyJ1PTT0
「梓……。
私はさ……、梓の事が好きだよ……。
梓と傍に居るのは楽しいし、面白いし、嬉しい。
私の想いを受け止めようとしてくれてるのも、涙が出そうなくらいに嬉しいんだよ……。
だから、さ……」


「私も……です、律先輩……。
私、律先輩の傍に居られると、嬉しくて、落ち着けるんです。
今だって、律先輩の腕の中に居ると……、私、落ち着けて安心出来て……。
ですから……」


私は胸の中に抱き留めていた梓を解放して、至近距離で見つめ合う。
あと拳一つの距離ほど近付けば二人の唇が重なる距離。
まだ私は震えてる。
梓も多分、緊張で震えてる。
でも、私達の唇が重なれば、この震えは止まるはずだ。
そうして、私達は手だけじゃなく、想いだけじゃなく、心と身体でも繋がれるようになるだろう。
梓が口を開き、少し遅れて私も口を開く。
お互いの想いをほとんど同時に言葉にして、お互いの気持ちを確認し合った。


「もう一度抱き締めて下さい、律先輩」


「もうやめよう、梓」


瞬間、梓の大きな瞳が更に見開かれた。
何が起きてるのか分からないって表情だった。
赤かった頬は若干青ざめてるようにも見えた。
梓のそんな表情を見るのは辛かったし、こんな風にしか言えない自分が悔しかった。
だけど、今これを言葉にしなきゃ、私達はもっと辛くて悲しい想いをする。
そう思ったから、私は梓に言ったんだ。


「えっ……? えっ……?
律……先輩? あの……、今、何て……?
だって、その……えっと……」


梓が視線を散漫にさせて、言葉を何度も途切れさせながら呟く。
その呟きは自分に言い聞かせてるみたいでもあった。
そんな事があるはずがない、今のは聞き間違いなんだって。
きっと梓はそう思ってるんだろうと思う。
冗談だ、って言ってやれれば、私もどれだけ楽になれるだろう。
梓をどれだけ安心させてやれるだろう。
でも、私はそうは言わない事にしたんだ。
梓の事が大切だから……、梓の事が大好きだからだ。
私はまだ自分の身体が震えてる事に気付きながらも、どうにか梓から視線を逸らさない。
まっすぐに梓の泣き出しそうな瞳を見つめる。


「もうやめようって言ったんだ、梓。
梓が傍に居てくれると嬉しいし、正直、今でも抱き締めたい気持ちは残ってる。
二人でずっと一緒に居れば、安心出来るし、幸せになれるんだろう……。
だけど……、これ以上の事はよくないって思うんだよ。
これ以上は……、駄目なんだ……」


「どう……してっ? どうして……っ?
だって、だって、律先輩、あの日、私……、私を……っ!
嬉しかった……。嬉しかったのに……っ!」


梓の表情がまた崩れる。
また涙を流し始めながらも、その言葉が止まる事は無い。
信じていた全てに裏切られた気分になってるんだろうと思う。
私に裏切られたとも考えているのかもしれない。
だけど、私は梓を裏切りたくないらこそ、自分が胸が痛いのを感じたって続けるんだ。


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